専門家のサポートを受けながら、無料アプリで通販サイトを制作【支援機関とともに 商工会議所編】
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度です。中小企業・小規模事業者にとって、身近な認定支援機関の一つが、地域の商工会議所や商工会です。
今回の「支援機関とともに」では、大阪商工会議所の例をもとに、商工会議所が、中小企業・小規模事業者に対して、どのような支援を行っているかについてご紹介します。
認定支援機関 | 大阪商工会議所(大阪府大阪市中央区本町橋2−8) |
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支援企業 | 石橋商事株式会社 |
企業概要 | 繊維商品卸し |
所在地 | 大阪市中央区北久宝寺町2丁目1-10 SD船場ビル801 |
ホームページ | https://www.ishibashi-pt.com/ |
新しいアクションを起こすため、商工会議所に相談
石橋商事株式会社は、1951年に創業した大阪船場の生地問屋である。国内アパレルメーカーを主な販売先として、オリジナルプリント布地の企画・販売を行ってきた。
現在、国内で販売されている衣料品の約9割は海外から輸入されたもの。国内の衣料品生産は年々減少し、同社の取引先である京都の染工場も全盛期の3分の1という状況だ。
追い打ちをかけるように、新型コロナウイルスの影響で百貨店から撤退するアパレルメーカーが増え、同社の売上も激減した。
「いま新しいアクションを起こさなければ、生き残ることはできない。そう思って、商工会議所に相談しました(石橋 社長)」
石橋邦香社長は、10年前に事業を承継した二代目社長である。先代の頃から大阪商工会議所の会員だったが、経営相談をしたこともセミナーに出席したこともなく、「月二回の届けられる会議所の機関紙をパラパラ読む」程度だった。そんな時、機関紙に載っていた「IT・ビジネスアプリ導入サポートデスク」の記事に目が止まった。
「IT・ビジネスアプリ導入サポート事業は、大阪商工会議所が大阪府の補助金をうけて実施しているものです。経営とITの専門家である同デスクのコーディネーターが、中小企業の販促・集客・業務改善等に役立つビジネスアプリの導入をサポートするものです(山田 経営相談室課長)」
ネット通販に興味があった石橋社長は、商工会議所に相談。コーディネーターを派遣してもうことにした。
ITの知識ゼロから、通販サイトを独力で作成
当初、石橋社長には「IT化には大きな費用がかかる」というイメージがあった。しかし、川野コーディネーターからは、「お金のかかることはしなくても良い。できることからIT化をスタートしたらどうか」という提案があった。
「当社はホームページも開設していない状態で、ITの知識はゼロでした。しかし、川野コーディネーターは、ITの知識がなくても良いと言ってくれました(石橋社長)」
巣ごもり需要に対応するため、一般消費者向けのネット通販を始めたいと相談すると、川野コーディネーターからは、無料・格安のアプリ(ホームページ作成サービス)を使ってホームページを制作したらどうかというアドバイスがあった。自分でホームページを作れるとは思わなかったため驚いたが、コーディネーターにアプリ(サービス)の使い方を教えてもらいながら、独力で作成した。
「ホームページ制作の知識が全くありませんでしたが、思ったより簡単でした。出来上がりも他社のホームページと比べて遜色のないものができたのでないでしょうか(石橋社長)」
自分で作成したため、タイムリーに更新ができ、商品の追加などの改良もできる。これからのネット通販の運用を考えると、自分でつくる意義は大きかった。
「中小企業・小規模事業者の多くは、資金(カネ)も人材(ヒト)も不足しています。大阪商工会議所では、このような中小企業の経営実態に即したサポート、小規模事業者の目線からのアドバイスを心がけてきました。今回のサポートデスク事業も、このような考え方に基づいています。(山田経営相談室課長)」
専門家からアドバイスを受けながら、IT化を進める
石橋商事はホームページを開設。一般消費者を主なターゲットに、50cm単位でオリジナルデザインの布地を販売する、ネット通販をスタートさせた。あわせて、国内最大級のハンドメイド通販サイトでも、手芸・洋裁の趣味の方やクラフト作家などを念頭に、布地を販売することにした。さらに、インスタグラムのアカウントを取得し、新作布地の紹介も始めた。このような取り組みは、コーディネーターや商工会議所のアドバイスによるものだ。
「以前から、ITの必要性について頭では理解していました。しかし、どうすれば良いのかが分かりません。私たちのような中小企業は、きっと多いのではないでしょうか。今回、商工会議所に相談し、具体的な方法をアドバイスしてもらったことで、IT化への道筋が見えてきました(石橋社長)」
ネット通販を始めたことにより、一般消費者との接点が生まれたことで、売上以外の波及効果もあった。ホームページやインスタグラムを見た人から「こんなデザインが欲しい」と言われ、デザインへの要望やニーズを知ることができた。また取引がなかった企業からも「こんなことはできないか」との問い合わせを受けるようになった。ネット通販の売上は成長途上だが、手ごたえを感じているとのことだ。
「衣料品について言えば、海外で生地を手当てして海外で縫製するという流れは、これからも変わらないでしょう。このようななかで生き残るためには、お客様が求めるものを短納期で提供していくこと、海外にはない素材を提案することだと考えています(石橋社長)」
ネット通販は、課題の解決のための足掛かりになった。今後は、新しい分野への進出、ビジネスモデルの転換などにも取り組んでいきたい」と言う。
「商工会議所では、補助金活用や事業計画作成など経営全般に係るアドバイスをしています。これからも、中小企業・小規模事業者の皆様の課題解決のため、複数の支援メニューを組み合わせながら、総合的なサポートをしていきたいと思います(山田経営相談室課長)」
いまコロナ過で、多くの企業が厳しい状況にある。生き残りを図る中小企業・小規模事業者にとって、身近な相談相手として商工会議所は期待されている。
IT化の取り組み事例
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