業績向上の仕組みづくりシリーズ④ “営業プロセスの見える化”の促進
今回のテーマは、営業プロセスの見える化になります。販売している商品やサービスを問うことなく、そして顧客が法人あるいは個人の別なく、ほとんどの企業では営業活動が業績向上のために、とても重要な役割を担っていると思います。それにもかかわらず、多くの企業では「営業」という仕事にたくさんの課題や問題を抱えており、経営者や営業責任者は営業力強化のための取り組みに頭を抱えていると思います。
営業活動の悩み
例えば、このようなお悩みはありませんか?
- ・営業マンごとに活動件数がバラバラで、安定もしていない。
- ・いつ、誰に、何を、どのように提案するかは、営業マン(個人)に任されている。
- ・営業マンの活動結果(商談情報)が統一のルールで共有されておらず、他の人が何をやっているのかは、お互いによくわからない。
- ・顧客を前任者から引き継いでも、簡単な引き継ぎ資料しかない。
- ・顧客リストが担当営業マンによって様々な作られ方をしていて、データも個人のパソコンのローカルに保存されていて共有されていない。
もしもあなたの会社に営業マンが三人以上いるのであれば、きっと該当する項目があるはずです。営業という仕事は、営業マンの経験値や性格、考え方に依存する部分が多く、営業マンごとにやり方が違ってしまいがちです。ここに営業という仕事の大きな落とし穴があります。営業マンは社内ではなく、外出してお客様先で商談をします。そのためにマネジメントがおよびにくく、ある程度は個々人に任せるしかないと思われています。しかし、解決する方法はあるのです。それが、営業プロセスの見える化です。
前回の「業績向上の仕組みづくりシリーズ③ 理念共有型の人材採用」では、社員たちが採用活動に取り組むことで、会社の強みや魅力を再確認し、仕事のやりがいを醸成することができるという理念共有型採用についてご説明しました。今回は営業力強化の四大要素の中で、ふたつ目の「仕組構築」の前半として、“営業プロセスの見える化”について、お話ししたいと思います。
商談履歴の見える化
営業プロセスの見える化の取り組みとして、お伝えしたいひとつ目は、商談履歴の見える化です。経営コンサルをした企業で、必ずと言っていいほど聞かれる事例があります。
【例1】
「異動したり退職したりした先輩のお客様を急に引き継ぐことになった営業マンが、過去に小さなクレームを受けた取引先に、担当になったことの挨拶にうかがったときのことです。取引先の社長から、起きた問題でどれほど迷惑をしたか、厳しく話を聞かされました。お客様としては二度と同じことを繰り返されてはたまらないので、再発防止の観点からも、当たり前の対応ということになります。新任の営業マンとしては、自分ではなく前任が起こした問題なのですが、これも引き継ぎの仕事の一環と諦めて、頭を下げつづけながら、社長のお話をうかがいました。」
余程、大きなクレームでもない限り、前任からの引継書には細かなことは書かれていないものです。結局、新任の挨拶にもかかわらず、お客様も営業マンもあまり気持ちの良い面談にはならない、そんなことを営業の仕事をしていれば、必ず誰でも経験したことがあるはずです。私も十指に余るほど、同様の体験をしています。互いに気まずい第一印象になりがちで、信頼関係を構築するためには、長い時間を費やして幾度も足を運ばなければならないことも少なくなかったです。
一方で、ある企業では、こんなことがありました。
【例2】
「新任の挨拶のときに、お客様の情報が細かなことまでしっかりと引き継がれていて、初回訪問時に営業マンの方から、過去にいただいたクレームについて、お詫びの言葉と再発防止の対応について説明したそうです。先手を打ったのです。『そんなことまで知っているか』と、お客様はとても驚かれ、会社の対応についていたく感心されていたとのことです。」
顧客というものは担当した営業マンに付いてしまいます。だからといって、大切なお客様とのやり取り(商談履歴やクレーム対応など)を、営業マンが個人のパソコンや手帳の中、場合によっては自分の記憶の中だけにしまっていては、顧客に信頼される営業活動にはつながりません。顧客とのやり取りを担当した営業マンだけでなく、誰もが把握できる仕組み(保管・検索・共有)を作ることが大切です。
営業活動の見える化
ふたつ目は、営業活動の見える化です。上司や先輩ごとに、教えてもらう仕事の内容が変わってしまい、いったいどれが正解なのか戸惑ってしまう。これも営業現場で本当によく聞かれる声です。営業ほど、人によってやり方に違いがでやすい仕事はないでしょう。だからといって転職や人事異動の度に、仕事を初めから覚えなくてはならないようでは、人材の育成もなかなか思うようには進みません。営業活動にかかわるみんなで話し合い、自社の営業プロセスを明確化することができれば、属人的になりやすい営業という仕事も、誰もが同じ基準で確認することができます。
・それぞれのプロセスごとに、やるべき共通項目を決めておく。
例えば、関係構築のプロセスでは名刺交換やお客様の業界情報の紹介、情報収集のプロセスではお客様の満足度のアンケート調査や担当者の上司への挨拶、情報提供のプロセスでは自社商品のデモなどといったふうに、やるべき営業活動を定義しておけば、営業マンの個人的スキルに依存せずに高い品質の営業活動を行うことができます。
商談において、それぞれのプロセスでやるべきことが決まっていれば、次回訪問で何をするべきなのかとか、何ができていないかとか、活動計画が立てやすくなります。やるべきことができていないのに商談を急ぐあまり、無理に次のプロセスに進もうとして、価格競争になって利益を失ったり、他社と競合させられて失注したりということも、起こりにくくなるでしょう。社内のみんなで話し合い、自社の営業スタイルを明確に決めて、営業マニュアルを作ることをおすすめします。営業の仕事で、誰でも同じように成果を上げられるだけでなく、新入社員の育成や後輩への仕事の引き継ぎでも役に立つことでしょう。
- ■便利なツール
- Excelや名刺管理ソフトなど利用したり、営業日報や商談の進捗管理をパソコンやスマホで簡単に行える営業支援ソフト(SFA)を導入してみるのもいいかもしれません。
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