【企業間連携】「民間支援機関編」 ~板金加工メーカー3社が連携し、生産性向上と受注機会の拡大を図る~
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営の専門知識のある個人や団体を認定する制度であり、税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が認定支援機関として登録されています。
株式会社ゼロプラスも、認定支援機関の一つです。「ものづくり中小企業を応援する」をモットーに、製造現場に精通した中小企業診断士が、製造業・卸売業の経営を支援しています。
今回の事例では、補助金を活用して、板金加工業を営む中小企業3社が連携し、それぞれの得意分野を活かしながら、生産性向上と受注機会の拡大をすすめている事例をご紹介します。
認定支援機関 | 株式会社ゼロプラス(兵庫県伊丹市西台3丁目9-20 アシビル3F) |
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支援企業 | 株式会社ユーエスケイ |
企業概要 | プレス板金加工、精密板金、スポット溶接、機械加工、各種設計製作 |
所在地 | 群馬県伊勢崎市戸谷塚町288-1(工場所在地) |
WEBサイト | https://usk1991.jp/ |
宅配ボックスの受注増に対応するため、企業間連携を推進
株式会社ユーエスケイは、群馬県の板金加工メーカーである。精密板金の設計から板金加工品の製造までを一貫して行い、着実な成長を重ねてきた。
同社の板金加工品のなかで、近年大きく売上を伸ばしてきた製品が「宅配ボックス」である。宅配ボックスとは、受取人が留守の時でも荷物を受け取れるための鍵付のロッカーだ。ネット通販の利用者の増加にともない、マンションやアパートの共用設備等として設置されるケースが増えてきた。
くわえて最近は、コロナ禍で宅配便を対面での受け取りを避ける人が増え、「置き配」が一般化してきたことから、戸建住宅でも宅配ボックスを設置する家庭が増えてきた。宅配ボックスの受注増の影響について、同社の内田勉社長はこう語る。
「新型コロナの感染拡大をきっかけとして、建材メーカーや住宅メーカーから宅配ボックスの受注が急増しています。そのため、当社の従来の機械設備や組織体制では対応が難しくなってきました。(内田社長)」
また近年、宅配業者の人手不足や過剰労働が社会問題となっているが、宅配ボックスは受取人不在による再配達を防ぐことから、物流業界にとっても宅配ボックスの普及が望まれている。つまり、アフターコロナの時代になっても、市場拡大が期待できる製品なのだ。
内田社長は、将来の受注増に対応した生産体制の構築が急務であると考え、取引先からの紹介で、ものづくり中小企業の支援で豊富な実績を有する認定支援機関株式会社ゼロプラスの大場正樹代表に相談した。ゼロプラスは、群馬県内の板金製造業と板金・切削加工業の営業代行・マッチングを行う会社も立ち上げた、ものづくり中小企業の支援で豊富な実績を有する認定支援機関である。
「話をうかがうと、単に機械設備を導入するだけで課題を解決するのは難しいと感じました。そこで企業間連携により、適切な分業体制を築くことで生産性の向上を図り、宅配ボックス等の板金加工品のビジネスチャンスを拡大していくことを提案しました(大場代表)」
大場代表は、企業間連携による生産性向上等を目的とした「ものづくり・商業・サービス高度連携促進補助金」の活用をアドバイス。同社を含めた板金加工メーカー3社が連携し、板金加工品の即納・量産体制を構築することを提案した。
補助金を活用し、レーザー加工機とテーブルスポット溶接機を導入
ゼロプラスのコーディネイトにより、同社と、群馬県の板金加工メーカーA社、神奈川県の板金加工メーカーB社が連携し、板金加工品の即納・量産体制を構築することとなった。
同社が得意とするのは、試作品やオーダーメイド製品、小ロット製品である。高い設計能力と、ものづくりの改善提案、VA/VE提案は取引先から高い評価を受けている。その一方で、量産品への対応が難しいのが、欠点である。
この弱みを補うのが、A社だ。同社と同じ群馬県にあり、従業員の人数も多く、板金加工品の量産設備も有している。連携にあたっては、同社が試作品やオーダーメイド品を担当。そのノウハウを活かして量産品を設計し、その設計データをもとにA社で量産することで、試作品から量産品まで対応することとした。
もう一社の連携先であるB社は、神奈川県にあり、南関東を事業エリアにしている。同社とB社が連携することで、事業エリアが広がり、北から南まで関東全域で顧客ニーズに即応できる体制が構築できると考えた。
試作品の生産リードタイム改善、生産能力増強のため、同社は補助金を活用して、レーザー加工機とテーブルスポット溶接機を導入。最新のレーザー加工機により、加工時間が大幅に短縮でき、加工精度も向上した。また、テーブルスポット溶接機を導入したことで、熟練工でなくても溶接作業ができるようになり、作業時間も短縮した。
「導入したレーザー加工機とテーブルスポット溶接機は、主に女性従業員に操作してもらっています(内田社長)」
同社は、「群馬県いきいきGカンパニー」の認証を取得するなど、女性活用を積極的に進めているが、新規設備の導入は女性が働きやすい環境づくりにも役立っていると内田社長は言う。
▲ レーザー加工機
▲ テーブルスポット溶接機
▲ 群馬県いきいきGカンパニー認定証
企業間連携をすすめ、生産性向上と競争力強化を図る
大企業と比較して、中小企業の労働生産性は低い。2020年度の中小企業白書は、その主たる原因として、中小企業の「資本装備率(従業員一人当たりの機械や設備への投資額)」が、大企業の約1/3という低さである事を指摘している。
「私たちは認定支援機関として、公的な支援制度等を活用しながら、機械設備やITツールなどの導入支援を行い、中小企業と大企業との差を少しでも埋めていければと考えています(大場代表)」
このような経営支援の中で、いま大場代表が力を入れて取り組んでいるのが、中小企業同士のビジネスマッチングである。今回の事例である補助金活用をした企業間連携も、そのビジネスマッチングの一環だと話す。
中小企業が連携することで、お互いの強みを引き出し、弱みを補うことで、大型案件を共同で受注できるようになるのではないか。また大企業の下請けという弱い立場から脱却することもできるのではないかと、大場代表は考えている。
「ゼロプラスでは、板金加工メーカーと共同で株式会社XOという子会社を立ち上げ、ものづくり中小企業のビジネスマッチングのためのプラットフォームの提供を開始しています。このような取り組みを今後より広い範囲に展開できればと思っています(大場代表)」
「中小企業は経営資源に乏しく、設備面でも組織面でも大企業にはかないません。そのなかで競争力を高めながら、生き残っていくためには、中小企業同士の連携が欠かせないことを、今回の補助事業を通じて痛感しました(内田社長)」
従業員の賃金向上、労働環境の改善のためにも、生産性向上は欠かせない。そのための一つの手法として、同業他社との企業連携を進めていきたいと内田社長は語る。
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