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金融EDIの導入で、経理業務を効率化する!

金融・税制
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一般社団法人全国銀行協会では、2018年12月25日、「全銀EDIシステム」(愛称ZEDI=ゼディ)とよぶシステムを稼動開始しました。
ZEDIは、企業間の総合振込において、支払企業が振込金額とともに、支払通知番号や請求書番号などの情報(金融EDI情報)も併せて送信することができる便利なシステムです。
これにより、受取企業は売掛金と入金額の消込業務を効率化することができます。
今回は、ZEDIの導入を検討する中小企業の皆さまに向け、その活用方法やそれによって得られるさまざまなメリットなどを、全国銀行協会 事務・決済システム部に伺いました。
※本記事は、2019年1月23日の取材をもとに執筆・掲載しています。

企業にとって入金消込は大きな負担


経理業務の問題とZEDIの効果

経理業務の問題とZEDIの効果
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我が国の企業の経理業務は実はとても煩雑です。商取引における代金決済を行う場合、商習慣としてその多くで「月末締め、翌月払い」の形が採用されています。また、支払先が同一の場合、複数の商取引の代金を合算して一度に支払うことが一般的です。この方式では、受取企業側が想定する回収金額(売掛金)と、実際に入金される金額に食い違いが生じるケースが多くあります。

売掛金の消込作業は、企業の経理部門にとって軽視できない負担となっており、多くの経理担当者の悩みです。
一般社団法人全国銀行協会(以下「全銀協」という。)が構築した「全銀EDIシステム(ZEDI)」は、まさにこうした企業の悩みを解消し、企業の経理業務を効率化するための新たなプラットフォームです。
このプラットフォームは、一般社団法人全国銀行資金決済ネットワーク(以下「全銀ネット」という。)が運営を担当しています。全銀ネットは、国内の為替取引を銀行間で行う「全銀システム」の運営も担っており、システム運用には一日の長があります。
なお、EDIとは、「電子データ交換(Electronic Data Interchange)」のことで、特に企業間においては商取引の情報をネットワークを通じて電子的に交換することを指します。

ZEDIを利用することで、商取引の代金振込において、支払企業は振込先・金額情報のみならず、支払通知番号や請求書番号などの情報(金融EDI情報)を自由かつ大量に添付することができるようになります。
その結果、受取企業は入金額がどの取引のどの請求に基づく支払いなのか、という情報をデータとして具体的に知ることができ、売掛金の自動消込を実現、作業を大幅に効率化することができるのです。

支払企業にとっても、受取企業からの照会に対応する負担が軽減され、支払側、受取側の双方がともに大きなメリットを得られることになります。

金融機関の大半がZEDIに接続

全銀協 事務・決済システム部 髙倉裕一次長(右)、浅田寿人調査役

全銀協 事務・決済システム部
髙倉裕一次長(右)、浅田寿人調査役

経理業務の効率化に有効なZEDIの構築の経緯や、活用によって得られるさまざまなメリットなどを、全銀協 事務・決済システム部の?倉裕一次長と浅田寿人調査役に伺いました。

ZEDIの構築に至るきっかけは、金融庁の金融審議会が2015年12月にまとめた「決済業務等の高度化に関するワーキング・グループ報告」にさかのぼります。この報告の中で、2018年頃を目途に全銀システムの加盟金融機関が参加する新システム(=ZEDI)を構築することが提言されました。

この報告に基づき、2016年2月、金融界、産業界などをメンバーとする「XML電文への移行に関する検討会」が設けられ、具体的な検討がスタートしました。なお、XML電文とは、送金電文の長さを柔軟に設計、変更することができ多くの情報を搭載することができる電文方式です。
さらに同年12月にはZEDIの構築が正式に決まり、全銀ネットにおいてシステム構築に向けた作業がスタート。約2年の開発を経て、2018年12月に稼動を開始しました。
政府が成長戦略として打ち出している「未来投資戦略2018」でも、「金・商流連携等に向けたインフラの整備」としてZEDIとXML電文化を強調、その実現のために全銀協や商工会議所などと関係省庁が連携し、ZEDIの周知活動やその活用事例を共有する取組を推進するとされています。


全銀EDIシステムに接続する加盟銀行数
全銀EDIシステムに接続する加盟銀行数
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ZEDIのサービス開始時点における、金融機関の接続状況は321金融機関です。その内訳は表「全銀EDIシステムに接続する加盟銀行数」のとおりで、銀行およびその他の業態が91行で、信用金庫業態(信金中央金庫と信用金庫)が230庫です。
稼動後に参加する意向の金融機関も69あり、個人との取引や資産管理が主体の金融機関を除くと、企業と取引を行っている金融機関の大半がZEDIに接続する見通しです。

中小企業を含む幅広い産業分野の企業への普及を目的に、全銀協および全銀ネットは、全国の商工会議所などとも連携し、2018年9月から11月にかけ、全47都道府県で説明会を実施してきました。期間中の合計で約2,300人が説明会に参加し、ZEDIへの関心の高さを裏づけています。2018年度は説明会の全日程を終えましたが、2019年度も引き続き開催する予定です。
その他の広報活動としては、専用のウェブサイトを開設している他、紹介動画を制作して東京メトロのメトロビジョン(PR用の車内映像)で放送しました。全銀協および全銀ネットでは、引き続きその普及に向け全力を挙げていきます。

ZEDIの導入手順を紹介

支払企業と受取企業との間の受発注や代金請求などに関するやりとりは、特に中小企業の場合、ファクスなどの紙ベースで行われるケースが多いのが現状です。もしそれを電子的なデータでやりとりできれば、商取引から決済、そして消込までの一連のプロセスを人手を介さずに処理することが可能となり、ZEDIを最大限に活用できるようになります。
ZEDI導入の手順は、以下のとおりです。


対象となるサービスおよびチャネル
対象となるサービスおよびチャネル
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(1)支払企業が現在、現金自動預払機(ATM)、銀行窓口、ファクスを利用して代金決済をしている場合は、まず一括ファイル伝送(FB)またはインターネットバンキング(IB)のサービスの利用が必要です。
(2)それらをすでに利用している場合は、ZEDIに対応した会計ソフトなどが必要になります。現在使用しているソフトウェアをアップデートするか、対応するソフトウェアを新たに購入することなどが必要です。

ZEDIの利用は、あくまで各金融機関が提供しているエレクトロニックバンキング(EB)またはインターネットバンキングの延長線上のサービスです。利用手数料や契約内容の詳細は、取引金融機関にご確認ください。

ZEDIを使用して金融EDI情報をやりとりするためには、振込データをXML電文で作成する必要があります。
XML電文の作成機能がない、作成方法がわからない、といった企業の皆さまに向け、全銀ネットでは、「S‐ZEDI(エス?ゼディ)」というツールも無償で提供しています。
これを利用すれば、専用ソフトの購入や会計システムの改修をしなくてもウェブブラウザ上で入力することによりXML電文を簡単に作成することができ、「S‐ZEDI」で作成したXML電文はそのままZEDI対応の法人インターネットバンキングで利用できます。
1回当たり10件までの取引明細を登録することができるので、特に1回当たりの支払件数が比較的少ない中小企業の皆さまなどにとって、便利なツールです。

全銀協に多く寄せられる質問に「取引先(受取企業)がZEDIを利用していない場合でも利用できますか」というものがあります。売掛金の消込業務を効率化するには、支払企業および受取企業の双方がZEDIを導入していることが前提となります。ZEDIを利用していない企業に対しても、XML電文による振込はできますが、その場合、受取企業は売掛金の消込業務の効率化に必要な金融EDI情報を受け取ることはできず、従来どおり売掛金の消込業務を行うことになります。

想定するモデル事例とその効果


金融EDIの活用効果
金融EDIの活用効果
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例えば、流通システムの開発センターが中心となって行った実証実験では、ある大手小売業のケースにおいて、売掛金の消込時間(事務負担)を、それまでの約6割にあたる年間9,000時間の短縮ができるという結果になりました。ZEDIの狙いとする売掛金の消込業務の効率化の効果の大きさが実証されたことになります。

この他、金融EDI情報の活用事例として、全銀ネットでは「S-ZEDI」を活用した以下のようなものを挙げています。その一部を紹介します。
(1)複数請求がまとめて振り込まれ、単体の請求書の金額と振込金額が合致しないケース
→(対応)「S-ZEDI」の「請求番号」欄に、支払企業側が合算する請求書番号を全て入力し、振り込む

(2)定期的な取引で、今月と翌月の請求がまとめて振り込まれ、単体の請求書金額と振込金額が合致しないケース
→(対応)支払企業側が「S-ZEDI」の「備考」欄に、翌月分(○○万円)を含めている旨を入力し、振り込む

(3)単体の請求書の請求が分割して振り込まれ、請求書金額と振込金額が合致しないケース
→(対応)支払企業側が「S-ZEDI」の「備考」欄に、一部支払とする旨を入力し、振り込む

(4)振込手数料が請求金額から差し引かれ、請求書金額と振込金額が合致しないケース
→(対応)支払企業側が「S-ZEDI」の「金額相殺理由」欄に減額とした理由、「相殺金額」欄にその金額を入力し、振り込む

以上のように、さまざまな事情で請求書金額と振込金額が合致しないケースが存在します。それをあらかじめ支払企業側が情報入力することで、双方の業務負担が軽減されることになるのです。
さらに将来的には、中小企業庁が主導して策定した「中小企業共通EDI」と、ZEDIを連携し、全ての中小企業同士のXML電文による取引の実現をめざしています。現在はこの実証事業を行っており、これが実現すれば、受発注から決済に至るまでの情報が連携され、売掛金の自動消込などが可能となり、さらなる業務効率化、生産性向上につながることが期待されています。

取引金融機関やITベンダーへ相談を

髙倉裕一次長髙倉裕一次長

浅田寿人調査役

浅田寿人調査役

ZEDIの導入を検討したい企業の皆さまは、取引金融機関または導入しているソフトウェアのベンダーにぜひ相談してみてください。
取引金融機関に対しては、ZEDIを利用するための具体的な手続き(申し込み方法や契約内容、利用手数料、ソフトウェアのアップデートの必要性など)について相談することができます。
ソフトウェアのベンダーに対しては、そのベンダーが提供する製品やサービスがZEDIに対応しているかどうかや、XML電文を作成する機能を備えているかどうか、ということを確認することが必要です。また、売掛金の自動消込の機能があるかどうか、も重要です。ZEDIに対応し、自動消込の機能を有していれば、経理業務の効率化に大きな効果があります。

例えば、1万円の利益を上げるためには、その何倍もの売上が必要になりますが、経理業務を効率化することによってコストを1万円削減できれば、1万円の利益を上げたのと同じだけの効果があります。これを機に、ぜひZEDIの導入と活用を検討してみてはいかがでしょうか。