担当者に聞く「DXとは」
近頃、ビジネスニュース等で「DX」という言葉を聞くことが増えてきました。DXは「デジタル・トランスフォーメーション」の略で、直訳すると「デジタル変革」。「デジタル技術で人々の生活をより良いものに変革する」という意味になります。と言っても、中小企業・小規模事業者の方のなかには、「ウチには縁遠い、別世界のもの」と感じている方も多いかもしれません。
しかしいま世界中で、ものすごいスピードで、またあらゆる分野でDXが加速しています。このような時代にあって、中小企業・小規模事業者は、どのようにDXに向き合っていけばよいのでしょうか。そのポイントについて、中小企業庁長官官房デジタル・トランスフォーメーション企画調整官の本由美子さんにお話をうかがいました。
DXとデジタル化の違いは、どこにありますか?
デジタル化は「いままでの業務のやり方」を電子化することで、目的は業務の効率化です。紙の申請書類をデジタルデータに置きかえてインターネットで申請する、電子申請はデジタル化の代表例です。
一方「DX(デジタル・トランスフォーメーション)」は、デジタル技術でビジネスの仕組みを大きく変えるものです。
たとえば、レンタルビデオ業界について考えてみましょう。レンタルビデオ店が会員データを管理するために、ITツールとして「顧客管理システム」を導入した。これはデジタル化ですね。もし、このレンタルビデオ店がインターネットを通じてビデオ配信サービスを始めたならば、これは「DX」です。デジタル技術によりビデオを貸し出すというビジネスモデル自体が「変革」されました。
この事例は少し極端ですが、まとめると、デジタル化は「いままでの業務を効率的にすること」であり、DXは「新しいビジネスの仕組みを構築して競争力を高めること」に主眼が置かれています。
と言いながら、デジタル化とDXの間に明確な区別があるわけではありません。「デジタル化の先にDXがある」というふうに考えれば良いのではないでしょうか。
DXは、どこから手をつければ、良いのですか。
とくに中小企業・小規模事業の場合は、経営者が先頭に立って、DX・デジタル化についての理解を深めることが大切になります。
他社がどのような取り組みをしているのか、WEBサイトや業界紙、展示会などで調べてみましょう。なおミラサポplus「事例ナビ」では、IT化などのキーワードで他社事例を検索できますから、ぜひ活用してください。
同業他社だけでなく、異業種のDX事例も調べましょう。業種業態が異なる企業の成功事例を自社の事業に当てはめて考えることで、ライバル企業との競争に勝つためのヒントが見つかるかもしれません。
国内だけでなく海外にも目を向けてください。DXの先行事例は、米国などの海外発であることが多いからです。海外の同業他社の取り組みが、数年後の国内の自社業界のスタンダードになることが珍しくありません。ありがたいことにDXの事例は、海外企業に視察旅行等に行かなくても、インターネットで様々なサービスや取り組みが公開されています。ブラウザの翻訳機能を使いながら、興味のあるサービスに登録・体験してみるのも良い方法ではないでしょうか。
DX・デジタル化をすすめるポイントについて、教えてください。
まずは「DX・デジタル化をすすめるぞ」という意思を経営者自身が明確にして、自らの言葉で社員に伝えましょう。いままでの業務のやり方やビジネスの仕組みを変えるわけですから、社員の中には抵抗感を持つ人もいるかもしれません。まずトップダウンで方向を示し、経営者がリーダーシップを示すことが重要です。
そして「いまDXをすすめなければ、当社の成長はない」という意識を経営者と社員で共有することができたら、現場が抱える課題、社員がやりたいことを聞きながら、DX・デジタル化のために何をすべきかを話し合っていきます。ここでは現場の意見を聞くこと、ボトムアップの姿勢が大切です。それが、社内のモチベーションアップにもなります。
また、DX・デジタル化を競争力強化につなげるためには「顧客志向を徹底」し、獲得した顧客の行動データ等を経営に活かしていくことが鍵を握ります。ビッグデータ(大量のデータ)からニーズ等を読み取って、商品・サービスを開発することで、他社との差別化を図ることができます。
ただし、中小企業・小規模事業者の場合は、多くのデータを集めることが難しいかもしれません。たとえば、「RESAS(リーサス)」などのオープンデータを経営戦略に活用することも、DXの第一歩ではないでしょうか。
DXのための支援制度はどんなものがありますか?
DX・デジタル化のための代表的な補助金として、「IT導入補助金」があります。これは、中小企業・小規模事業者等のITツールの導入を支援するものです。
また、「持続化補助金」「ものづくり補助金」「事業再構築補助金」等の補助金についても、DX・デジタル化のための特別枠が設定されていたり、DX・デジタル化が審査の加点項目になっていたりします。それぞれの補助金の要綱の最新版を確認してください。
さてDX・デジタル化にあたって大切なのは、自社の課題を明確することです。しかし、中小企業・小規模事業者の場合にはデジタル技術に詳しい人材が社内にいないことも多く、ITベンダー(IT事業者)の主導ですすめられて、「思うような課題解決につながらなかった」というケースも散見されます。
このようにならないために、IT投資をムダにしないために、デジタル化支援サイト「みらデジ」やよろず支援拠点等の「専門家派遣制度」を利用して、第三者のIT専門家からアドバイスを受けることをおすすめします。①専門家との相談を通じて、自社の課題を明確にし、②解決のためにどのようなITツールを導入すべきかを理解し、③そのための補助金の活用を検討するという順番で考えるのが、良いのではないでしようか。
また中小企業庁には、「SME認定サポーター制度」というものがあります。これは、ITの専門知識・経験・実績などの一定の条件を満たしたITベンダー等を中小企業庁が認定し、登録する制度です。登録事業者はネットから検索できますので、ぜひ活用してください。
なお、DX戦略等を策定してDXに取り組もうとする企業には、経済産業省の「DX認定制度」があります。認定されると、低利融資や優遇税制などを受けることができます。少しハードルが高いですが、「本格的にDXを推進したい」という企業はご検討ください。
トランスフォーメーション
企画調整官
本 由美子
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