事例から学ぶ!「働き方改革」
働き方改革とは、「働く人たちが、それぞれの事情にあわせて、多様な働き方を選択できる社会」を実現するための取り組みです。2019年から働き方改革に関連する法律が順次施行され、時間外労働の上限規制や残業の割増賃金率の引き上げなどが実施されています。
働き方改革は、規模の大小に関わらず、すべての企業にとって必要な取り組みです。中小企業・小規模事業者も、避けて通ることはできません。
今回はミラサポplusの「事例ナビ」から、働き方改革を通じて、魅力ある職場づくりを進め、従業員の定着率向上や人材の確保、さらには生産性の向上、収益増につなげている事例をご紹介します。
働き方改革には、経営者のリーダーシップが不可欠
働き方改革の目的には、「時間外労働の削減」「幅広い人材活用」「同一労働同一賃金の実現」などがあります。そのなかでも「時間外労働の削減」は最重要課題です。
いままで日本の多くの企業では、「みなし残業」や「サービス残業」が当たり前のようになっていました。しかし、「どれだけ残業したか」が評価され、長時間労働が組織文化になっているような企業の場合、制度面だけを整えたとしても、働き方改革はなかなか進みません。
広島県の電装品メーカーも長時間労働が習慣化していました。当初は管理職を中心にボトムアップで働き方改革を進めていましたが、残業が企業風土に染みついているため、改革は思うように進みません。社長がトップダウンで制度改革を断行し、ようやく残業時間が減少しました。
トップダウンで長時間労働の習慣を見直す制度を導入するとともに、業務の見直しを行うことで、所定外労働時間を13%削減し、年次有給休暇の平均取得率は18.2%増加した。 労働時間削減や有給休暇取得に関する取組を発信した結果、採用希望者の質が向上。
このように中小企業・小規模事業者では、経営者が強力なリーダーシップを発揮しないと、働き方改革が進まないことが多々あります。
新潟県の建築金物等のメーカーも、残業の多さが評価されるような組織体質でした。「残業ゼロなんてできるはずはない」という管理職が多いなかで、トップが全社員の前で「残業ゼロ」を宣言。同時に、残業ゼロへの貢献度を評価して賞与で還元する制度をつくり、残業時間を大幅に減らしました。
社長が「残業ゼロ」を経営方針に掲げ、所定労働時間内で仕事を完了できる社員を評価することを通達。残業ゼロに向けた貢献度を評価し、賞与で還元。 基幹業務システムの刷新やWEBを活用した見積もりシステムの導入で作業時間を大幅に短縮し、残業時間削減を実現。
幅広い人材が活躍できる職場環境づくり
いま日本では、少子高齢化による生産年齢人口(15歳以上65歳未満)が年々減少しており、人材確保はますます難しくなることも予想されます。
一方、近年単身世帯や共稼ぎ世帯の増加により、働き方のニーズは多様化しています。多様な人材が活躍できる職場環境づくりを進めることは、人材の確保に大きく貢献します。
北海道の建設コンサルタント企業では、仕事と育児・介護の両立を図るための「両立支援制度」を導入しました。この制度では、フレックスタイム勤務制度の導入、看護休暇・介護休暇の拡充などにより、ライフステージ(結婚・出産・育児・介護など)にあわせた働き方ができる環境を整えています。
仕事と家庭や介護の両立ができるよう、非正規を含む全職員が利用できるフレックスタイム制度の導入、有給休暇制度の充実化を実施。 経営トップの意思表明や繰り返しの呼びかけにより職員の意識改革に努め、時間外労働の削減を実現。
少子高齢化が進むなかで、人材確保のために、高齢者を活用する企業が増えています。
長崎県の青果卸販売企業では、年齢の上限なく継続雇用ができるように就業規則を改定しました。あわせて、高齢社員の負担を軽減する設備の導入、高齢社員が働きやすい勤務時間の設定などを進めています。
積極的な高齢者活用のため、働き方に配慮した就業規則への改定や選果機の導入などを行うとともに人手不足に悩む地域の農家への労働力支援にも尽力。 高齢社員が経験を活かし、若手社員へ指導を行うことにより、スキルアップに貢献。
働き方改革は、「働く人たちが、それぞれの事情にあわせて、多様な働き方を選択できる社会」の実現をめざしています。
宮城県の水産加工メーカーは、多様な人材が活躍できる環境整備をすすめています。たとえば、外国人社員には生活習慣の違いをフォロー、障がいをもつ社員には特性にあわせた業務を任せています。それぞれの事情にあわせた働き方ができるようにしたことで、人材の定着率が高まり、生産量も大きく伸びたそうです。
従業員の病気を機に、13パターンにも及ぶ多様な勤務時間の設定など、個別の事情に合わせて働きやすい職場環境づくりを行ったことで会社と従業員との信頼関係が向上。人材も定着。 外国人の従業員は生活習慣の違いなどのフォローも行い、障がい者には個人の特性に合わせた業務を任せるなど、多様な人材を積極的に雇用。
多様な働き方に対応した人事評価制度の導入
働き方改革の目的の一つに「同一労働同一賃金の実現」があります。このためには、多様な働き方に対応した人事評価制度の導入が欠かせません。様々な雇用形態の従業員が納得できる公正な人事評価制度を導入することで、従業員のモチベーションが高まり、業務の効率化・生産性の向上につながります。
東京都の日本人形店は、人事評価等への不満から従業員の半数が退職する事態となりました。この反省から、雇用形態によらず成果を評価する新しい人事制度を導入。従業員が部署を越えて協力・連携する組織づくりをすすめています。
伝統産業において、雇用形態によらず社員の成果を評価する人事制度などを整備し、部署の垣根を越えて連携。
福岡県の保険代理店では、親会社からの出向社員と正社員、パートと正社員の処遇の違いに不公平感がありました。これを解消するため、人事考課と賃金体系の統一化に取り組んだことで、従業員のモチベーションが高まり、営業実績・収益も向上しました。
人事考課及び賃金体系等を親会社と統一し、賞与体系の格差が是正されたことで、出向者と社員の調和・連携が進み、営業成績や収益が向上。 パート社員と正社員の等級制度・人事考課制度の一本化、また正社員転換の際にも均等待遇を適用したことで、パート社員の仕事や能力開発に対する意欲が向上。
働き方改革を進めて、人材確保・業績向上へ
働き方改革は、規模の大小に関わらず、すべての企業にとって必要な取り組みです。現在、時間外労働の上限制限、年次有給休暇の時季指定、同一労働同一賃金等に関わる法律も順次施行されています。
厚生労働省の「働き方改革 特設サイト」では、このような働き方改革関連法の解説、働き方改革をサポートする助成金、働き方改革の業種別取組事例などについて紹介しています。
また、同じく厚生労働省の「多様な働き方の実現応援サイト」では、パートタイム・有期雇用労働者の待遇改善、正社員の働き方の多様化に役立つ情報を提供しています。
働き方改革は、従業員のためだけのものではありません。中小企業庁では、中小企業・小規模事業者の「人材戦略」という視点から、働き方改革を支援しています。この人材戦略には、経営者の意識改革、人材確保につながる経営課題の解決、若者・女性・副業・兼業人材等の多様な働き方の人材への対応、中核人材の育成などが含まれます。
「働き方改革」を進めて、従業員が働きやすい、魅力ある職場づくりを「人材の確保」へ、さらには「業績の向上」「利益増」という好循環につなげていきましょう。
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