事例から学ぶ「持続化補助金」
「持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)」は、小規模事業者等※が経営計画を自ら策定し、商工会・商工会議所の支援を受けながら取り組む「販路開拓」を支援する補助金です。補助対象の経費としては、販路開拓のための、チラシ・パンフレット、ホームページやウェブ広告、店舗の改装、展示会の出展、新商品の開発費用などが含まれます。また、国の政策目的にあわせた「特別枠」等も設置されています。
「販路開拓のための」という要件はありますが、小規模事業者(法人・個人)にとっては、使い勝手の良い補助金です。今回の「事例から学ぶ」シリーズでは、ミラサポplusの事例ナビから、持続化補助金を活用した事例を紹介しつつ、持続化補助金の概要について紹介します。
なお、持続化補助金は年度等によって、申請要件・対象経費等が異なります。最新の「公募要領」をご確認ください。
※常時使用する従業員数が「商業・サービス業(宿泊業、娯楽業を除く)」の場合は5人以下、それ以外の業種の場合、20人以下の事業者。
経営計画を策定して行う、小規模事業者の「販路開拓」を支援
「持続化補助金(小規模事業者持続化補助金)」は、小規模事業者の販路開拓を支援する補助金です。「持続化」という文言は、小規模事業者が自社の経営を見直して、「持続的な経営」に向けた経営計画を作成したうえで行う「販路開拓」を支援するという、補助金の目的を表しています。ですから補助金の申請にあたって、「経営計画」の策定は必須です。
持続化補助金は、地域の商工会議所・商工会が窓口になっています。補助金の申請については、商工会議所・商工会の会員でなくても受け付けています。ただし、経営相談等のサービスについては会員のみが対象となる場合があります。(詳細については、地域の商工会議所・商工会にお問い合わせください)
持続化補助金は、事業年度等によって申請要件・補助対象経費・特別枠などが異なることがあります。これから紹介する事例は、過年度の採択事例であり、同種同様の事業であっても採択されないことがあります。申請にあたっては、最新の「公募要領」をご確認ください。
また審査の結果、不採択となり、補助金が交付されないケースもあります。
販路開拓につながる「設備」の導入に活用
持続化補助金の支援対象は、「販路開拓のための取り組み」です。「設備が古くなったから、補助金で新しい設備を導入したい」では、持続化補助金の趣旨目的から外れてしまいます。
具体的には、(販路開拓につながる)新サービス・新商品の開発提供のための「設備」導入に利用されています。
北海道のケーキ店は、補助金を活用して、ケーキやクッキー等に写真や絵を印刷できる「可食プリンター」を導入しました。これにより、子どもたちからのクリスマスケーキの注文などが増えました。
補助金を活用して、バースディケーキやクリスマスケーキなどにお客様の好きな写真や絵を、可食シートを使って印刷できるフードプリンターを購入。他店との差別化を行うとともに新規顧客の獲得により業績向上を図った。
島根県の理髪店は、散髪に行くことが困難な在宅介護者のニーズに対応するために、補助金で「移動式リクライニングチェア」と「移動式シャンプーユニット」を導入し、出張理容サービスをスタートしました。
吉賀町域内において、在宅介護者に対して出張理容サービスを行うために移動式リクライニングチェアと移動式シャンプーユニットの導入を行った。
また、出張理容サービスに関する事業案内パンフレットの作成・配布を行った
静岡県のスイミングスクールは、補助金で「トレーニング器具(レッドコード)」を導入し、低体力者向けのトレーニングプログラムを開発。高齢者等の新規会員獲得につなげています。
補助金を活用して、低体力者向けに個別トレーニングプログラムを開発し、それを実行するための器具(レッドコード)を導入した。
自主事業として、新しいトレーニングプログラムを掲載したチラシを作成・配布し、広報活動により新規顧客の開拓に取り組んだ
イメージがつかめたでしょうか。補助金の経営計画では、持続化補助金で導入する設備が、新たな顧客の獲得・新たな市場の開拓につながることを明確にする必要があります。
新サービス・新商品を紹介する「広報」に活用
新サービスや新製品を開発し、顧客に提供するためには、ターゲットである顧客への「広報」が欠かせません。
持続補助金では、チラシやリーフレットの作成・配布、看板の設置等の「広報費」に活用することができます。ただし、あくまで補助事業を対象とした広報であり、会社の事業を紹介する「会社案内」などは対象外です。
福島県の写真館は、貸しドレスも含めた新しい写真撮影プランをスタートさせました。このプランを告知するために、補助金を活用して、新聞折込チラシの実施、屋外壁面に特大ポスターパネルを設置しました。
新プランのPRにより、問合せが15件、チケット購入が2件あった。また、当店でのドレス姿撮影の認知度が向上し、結婚式や成人式などの撮影において、ドレスでの撮影を追加されるお客様が増加。客単価が20~30%アップし予想以上の効果があった。
京都府の養鶏場は、廃棄される親鳥等を使った「京丹波鶏カレー」を開発。商品のパッケージデザイン、チラシ・ポスターを作成・配布しました。
廃棄される親鳥を有効活用し、かつ卵をいれたときの相性を追求した「京丹波鶏カレー」を開発。
商品パッケージをデザインし、販路開拓のチラシ、ポスターを作成、販売店に配布した。
近年の広報に欠かせないのがホームページなどのWEB広報です。栃木店の老舗飲食店は、地鶏を使ったみそ味の焼き鳥を開発し、新商品のパンフレット・ホームページ(ランディングページ)を制作。そこに誘導するWEB広告(リスティング広告)を実施しました。
十千木鶏による味噌味の焼き鳥「謙信焼き」を商品化、生産体制を確立するために業務用グリルを購入した。
新商品PRと新規顧客獲得のためのパンフレットを作成した。
ランディング広告掲載のためのホームページを作成公開し、同時に、リスティング広告の掲載を行い、新規顧客の集客を図った。
新サービス・新商品をPRするためのホームページやWEB広告も、持続化補助金の対象経費です。ただし、これらの費用は広報費とは別の「ウェブサイト関連費」となり、補助金総額に占める割合などに制限があります。
新商品等のための「展示会・商談会」に活用
企業間取引(B to B)の販路開拓にあたって、展示会・商談会への出展は有効です。持続化補助金では、展示会・商談会の出展料や交通費なども対象経費です。
栃木県の農家は、自家米の玄米餅・玄米スナックを開発、販売をしていました。補助金を活用して、販路開拓のために、ロゴ制作などのリブランディングを行い、東京の物産展に出展。取引先の開拓に成功しました。
補助金を活用して、「ブランドイメージを向上させる取り組み」を行う。商品コンセプトを明確にした統一感のあるロゴの作成、店舗名にある「わくわく」するようなパッケージに改良するなど、具体的な表現によりブランド価値を高めた。
広島県の畳店は、新しい畳素材を使った福祉用具畳を開発。商品の認知度向上のため、補助金を活用して、パンフレットを制作し、展示会に出展しました。
福祉用具畳の認知度向上のため、展示会への出展、パンフレット配布を行った。
また、周知のため地元放送局での宣伝、DM・チラシの作成配布を行った。
顧客管理ソフトの導入によりDM発送に有効活用した。
長野県の酒造店は、インバウンド旅行者をターゲットにした英語版パンフレットとホームページ作成するとともに、輸出拡大を目的にフランス・シンガポールの海外展示会に出展しました。
インバウンド旅行者への訴求力UPのための英語版パンフレットとホームページ作成。
輸出売上増加を目指した海外展示会への出展及びセミナー活動。
既存事業とは異なる、新たな事業分野・新たな市場に進出する際に、展示会・商談会は、そのきっかけづくりに役立ちします。持続化補助金は、このように展示会・商談会・見本市の経費などに活用することができます。
「経営計画」を作成して、課題と目標を設定しよう
前述した通り、持続化補助金は、「持続的な経営に向けた経営計画」を作成したうえで行う「販路開拓」を支援するものであり、補助金の申請にあたっては、「経営計画(補助事業計画)」を作成する必要があります。小規模事業者が、「はじめて経営計画」を作成するのは、なかなか大変です。しかし、この持続化補助金をきっかけに、「経営計画」の作成に挑戦し、いままでの経営を見つめた直したという経営者も少なくありません。
炭酸ヘッドスパ装置を導入した兵庫県の美容院は、従業員と一緒に経営計画作成に取り組むうちに、「閉店後に社内で勉強会を開こう」など、社員から前向きな提案が出てくるようになったとそうです。
補助金を活用して、 20~40代の新規顧客に向けた炭酸ヘッドスパを導入。
チラシのポスティングのほか、無料体験による集客を試みた。
店舗の改装(プチ庭園造り)を実施した、埼玉県の寿司店は、持続化補助金の申請をきっかけに、「経営計画や販売促進の重要性を認識することができた」と言います。
地補助金を活用して、店舗周辺の空き地(幅約4m、長さ約12m)に、高級感の溢れるプチ庭園を造り、来店客が食事をしながら視覚でも味でも鮨を堪能していただく庭園づくりをおこない、店内の座敷からも見えるような配置にする。
集客力を高めて客数を増やし、こだわりや魅力が伝わる高付加価値メニューの開発などで客単価を上げ、売上と収益性を伸ばす。
持続化補助金の申請のための経営計画ではなく、はじめに会社の課題を解決し、目標を達成するための経営計画があり、その実現のために補助金を活用するというのが正しい道筋です。
商工会議所・商工会をはじめ、公的な支援機関では、経営計画の策定など、様々な経営相談に応じています。ぜひ活用してください。
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