事業計画の作成から補助金活用まで、パーソナルジムの開業を支援【支援機関とともに 商工会議所編】
「認定支援機関(経営革新等支援機関)」とは、国が経営についての専門知識のある個人や団体を認定する制度です。商工会議所、商工会、金融機関などの企業団体、また税理士・社会保険労務士・中小企業診断士などの専門家が登録されています。
今回の「支援機関とともに」では、「個室貸切型」の「健康増進」を目的としたトレーニングジムの開業にあたって、商工会議所が事業計画書の策定から、開業資金の調達、補助金の活用まで、サポートした事例をご紹介します。
▲パーソナルジム Linc(リンク)
認定支援機関 |
筑後商工会議所(福岡県筑後市和泉118-1) |
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支援企業 |
パーソナルジム Linc(リンク) |
企業概要 |
パーソナルトレーニングジム事業、出張トレーニング指導事業 |
所在地 | 福岡県筑後市羽犬塚531 2F |
WEBサイト | https://linc-gym.com/ |
商工会議所の「創業塾」に参加し、事業計画書を作成
「パーソナルジム Linc(リンク)」は、令和5年11月にオープンしたトレーニングジムである。代表の北川翔稀氏は、中学・高校・大学と野球を続け、独立リーグの徳島インディゴソックスに入団したが、肩や膝の怪我に悩まされて、23歳でプロ野球選手を引退。福岡市内のパーソナルジムでトレーナーとして働いた後、生まれ故郷の筑後市に帰り、父親の経営する「きたがわ整骨院」を手伝っていた。
「当初はトレーナーのスキルを活かして、整骨院の新規事業としてスポーツジム事業を立ち上げることも検討していました。しかし父から独立し、自分自身が個人事業主として、トレーニングジムを経営することにしました(北川代表)」
この開業までをサポートしたのが、筑後商工会議所である。きたがわ整骨院の経営支援も担当していた光延宇史経営指導員は、起業にあたって商工会議所の「創業塾」への参加をすすめた。
「創業塾とは、起業を考えている方のための研修カリキュラムです。経営や財務の基本知識、事業計画書の作成方法などを学ぶことができます。(光延指導員)」
筑後商工会議所の創業塾は4日間のコース。最初の2日間は、財務・労務・商品開発・販促などの基本知識について座学で学び、次の2日間では事業計画書の作成を経営や広報の専門家がマンツーマンでサポートするというものだった。
「いままでで経営について考えることがなく、経営知識はゼロの状態でした。創業塾で、市場分析やマーケティングの手法、ターゲットの考え方、集客方法など学ぶなかで、トレーニングジムのコンセプトや事業の方向性が明確になりました(北川代表)」
事業計画書を作成した後、日本政策金融公庫の創業融資と筑後市の創業者支援補助金を活用して、開業資金を調達。念願のトレーニングジムをオープンさせた。
▲きたがわ整骨院
▲創業塾
「個室貸切型」の「健康増進」を目的としたジムで、大手ジムと差別化
現在、トレーニングジムの競争は激化している。同ジムが立地する筑後市でも、近隣の八女市や久留米市に大手ジムが進出し、低価格をアピールポイントに攻勢を強めている状況だ。
このようななかで、大手ジムとの差別化を図るために、「初心者・女性・シニアをターゲットにした、身体のメンテナンスのための個室貸切型ジム」をコンセプトとした。
「パーソナルジムというと、筋肥大や極端なダイエットのイメージがあります。しかし当ジムは、お客様の身体の状態にあわせたオリジナルメニューを作成し、マンツーマンでトレーニングを指導することで、生涯にわたる健康づくりをサポートしていきたいと考えています(北川代表)」
北川代表は米国認定のトレーナー資格をもち、科学的な根拠に基づいたメニュー作成と指導ができる。「完全個室」なので、初心者・女性・シニアの方も相談しやすく、周りの目を気にすることなくトレーニングすることができる。これらの強みを活かすことで、大手ジムとの違いを出していきたいと北川代表は言う。
「私自身、野球人生のなかで、肩や膝、腰の怪我に苦しんできました。自分が思うように体を動かせないことは、痛みだけでなく、孤独も感じてします。だからこそ、一人ひとりに寄り添ったトレーニング指導を心がけています(北川代表)」
また、同ジムは、高校の部活等への出張トレーニング指導も行っている。元プロ野球選手の経験を活かして、身体づくりのポイントや身体の使い方を指導していると言う。
▲トレーニングジム設備
▲パーソナルトレーニング
整骨院との連携により、肩こりや腰痛の予防などサポート。
同ジムの強みの一つが、父親の経営する整骨院との連携だ。整骨院の患者のなかには肩こりや腰痛に悩む方も多いが、適切なトレーニングを行うことで改善に向かうケースも少なくない。
「とくにシニアの方ほどパーソナルトレーニングの効果が出やすいと感じています。肩こりや腰痛の予防など、整形外科や整骨院だけではサポートできない部分を補っていければと考えています(北川代表)」
オープンから半年が経過して、整骨院の患者さんからの紹介や口コミにより顧客は増えているものの、大手ジムと比べて、圧倒的に知名度が不足している。光延経営指導員に相談すると、小規模事業者持続化補助金の活用を提案された。
「北川代表と今後の集客・広報の方法について話しあうなかで、補助金を活用してジム店舗の壁面に大型看板を掲出することとしました。(光延指導員)」
同ジムは、久留米市とみやま市をつなぐ国道209号線と、八女市と大木町をつなぐ国道442号線の交差点に立地している。ここに大型看板を掲出することで、筑後市はもちろん、隣接する4市町のターゲットにジムの存在を周知することができると考えた。
持続化補助金の申請には事業計画書が必要になるが、光延経営指導員のアドバイスを受けながら、創業塾で学んだ知識と経験を活かして「満足できる事業計画書ができた」と北川代表。事業計画は無事採択された。
トレーニングジムの経営者として独立起業した北川代表について、父である整骨院の北川院長はこう語る。
「経営者の先輩としてアドバイスしたいこともありますが、親子だと反発する気持ちも出てきます。光延さんをはじめ、商工会議所が第三者の視点から経営サポートしてくれることは、心強く感じています(北川院長)」
トレーニングジムも整骨院もアプローチは異なるが、「身体のメンテナンスを通じて、地域の人を笑顔にする」という使命は同じ。今後も親子で協力しながら、地域の健康増進に貢献していきたいと北川院長は言う。
▲北川代表・北川院長・光延指導員
2024年4月11日
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