担当者に聞く「中小企業省力化投資補助金」
中小企業省力化投資補助金(省力化投資補助金)は、令和6年6月25日に第1回公募がスタートした「新しい補助金」です。中小企業等の人手不足解消につながる、IoTやロボット等の「省力化製品」の導入費用の一部を補助します。
省力化投資補助金の補助対象は、「製品カタログ」に登録した省力化製品です。このカタログから、自社の課題・業種・業務プロセスにあった製品を選び、販売事業者と共同で申請します。
「カタログ型」の補助金であり、ものづくり補助金や事業再構築補助金などとは異なるため、わかりにくいと考える方もいるかもしれません。この省力化投資補助金の特徴やポイントについて、担当者に話をうかがいました。
人手不足に悩む中小企業等の「省力化製品」の導入を支援
省力化投資補助金は、人手不足に悩む中小企業等の「省力化製品」の導入を支援します。
ここで言う人手不足とは、従業員の平均残業時間が30時間超、従業員が前年度比で5%以上減、求人を掲載しても充足しない、などのいずれかの状態に当てはまる事業者となります。かなり多くの事業者が該当するのではないでしょうか。
補助対象となる省力化製品は、事務局ホームページの「製品カタログ」に登録されたものです。
補助率は1/2、補助上限額は従業員数によって異なります。賃上げの優遇があり、補助事業実施期間(省力化製品の導入が完了し、事業実施報告書を提出するまでの期間)に、一定以上の賃上げを達成した場合、補助上限額が引き上げられます。
なお、補助要件等は変更する場合があります。申請にあたっては、必ず事務局ホームページで最新の公募要領を確認してください。
補助率と補助上限額
従業員数 | 補助率 | 補助上限額 | 補助事業実施期間に 一定以上の賃上げをした場合 |
---|---|---|---|
5名以下 | 1/2 | 200万円 | 300万円に引き上げ |
6~20名 | 500万円 | 750万円に引き上げ | |
21名以上 | 1,000万円 | 1,500万円に引き上げ |
- ・省力化製品を導入し、「労働生産性年平均成長率3%向上」を目指す事業計画に取り組むものを対象とします。
- ・補助上限額の引き上げを適用する場合、事業終了時に①給与支給総額+6%以上かつ、②事業場内最低賃金+45円以上とする計画を策定し申請する必要があります。
省力化投資補助金は、「カタログ型」の補助金
省力化投資補助金の特徴の一つが「製品カタログ」の存在です。先ほど申し上げた通り、補助対象となるのは、このカタログに登録された省力化製品に限られます。
カタログには、カテゴリごとに製品の対象となる業種や業務プロセス、省力化効果、活用のポイントなどが記載されています。また、省力化製品の導入によって、業務プロセスがどのように改善され、どのように省力化が図れるかが、フローチャートで説明されています。カタログ自体が「わかりやすい省力化の手引き」となっていますので、補助金申請に限らず、省力化を検討している事業者の参考になるのではないでしょうか。
今後、カタログのカテゴリや補助対象となる製品は増えていく予定です。カタログは随時更新されますから、事務局ホームページで、最新のものを確認するようにしてください。
- 補助対象製品のカテゴリ例(順次拡大予定)
- 清掃ロボット、配膳ロボット、自動倉庫、検品・仕分システム、無人搬送車(AGV・AMR)、スチームコンベクションオーブン、券売機、自動チェックイン機、自動精算機、タブレット型給油許可システム、オートラベラー、飲料補充ロボット、デジタル紙面色校正装置、測量機、丁合機、印刷用紙高積装置、印刷用インキ自動計量装置 など
簡便・迅速で、小規模企業・個人事業者も利用しやすい
いままでの補助金、ものづくり補助金や事業再構築補助金と、省力化投資補助金との違いについてご説明します。
まず補助金の目的です。ものづくり補助金は革新的なサービス開発や試作品の開発など、事業再構築補助金は新分野展開などを支援するための補助金ですが、省力化投資補助金は原則として「既存事業の省力化」のための補助金です。
また、省力化投資補助金は、小規模企業や個人事業者も申請しやすい補助金になっています。
ものづくり補助金や事業再構築補助金の場合、申請にあたって、10枚とか、15枚とかの事業計画書を作成し、導入設備の概要、業務プロセスの改善方法、事業効果などを根拠となる資料を使って記載していかなくてはなりません。
省力化投資補助金の場合、カタログに登録されている省力化製品は、業務プロセスの改善方法、省力化効果、価格妥当性などが、すでに登録時の審査で検証されています。想定されている業種で想定されている使い方をすれば、投資効果に見合う省力化が実現できると認められているわけです。
このように省力化効果が検証済なので、申請に必要な書類も簡便になっています。たとえば、事業計画書にも、申請フォームから、A4・1ページ分くらいの簡単なものを販売事業者と共同で作成すればOKです。事業者の負担は、大幅に軽減されています。
採択後の事業実施もスピーディです。ものづくり補助金や事業再構築補助金の場合、採択後に相見積りや図面などの書類を提出してからの交付決定となるため、事業着手までに時間がかかってしまうケースも珍しくありません。一方、省力化投資補助金は「採択=交付決定」となるので、事業を迅速に実施できます。これも、大きな利点ではないでしようか。
販売事業者が、製品の導入・申請等をサポート
省力化投資補助金の具体的な申請の流れについてご説明します。
- まず事務局ホームページの「製品カタログ」から、自社の人手不足解消に効果のある省力化製品を検討します。
- 販売事業者と製品導入ための商談を行い、省力化製品の導入を決めます。
- 販売事業者に省力化投資補助金を利用したいことを伝えて、共同で事業計画を作成します。
- 申請は、販売事業者と共同で行います。
- 審査を経て、補助金の採択・交付決定となります。すべての申請が採択されるわけではありません。
販売事業者が製品の導入、補助金の申請・手続等をサポートしますので、小規模企業・個人事業者も安心して利用していただけます。不明な点については、中小企業省力化投資補助事業コールセンター、または各都道府県のインフォメーション窓口にお問い合わせください。
省力化投資補助金の公募は、令和8年9月末頃まで継続的に行っていきます。製品カタログは随時更新していきますので、申請にあたっては最新のカタログを確認し、自社の課題にあった省力化製品を選んでください。
製品カタログは、中小企業に最適な「省力化の手引き」としても利用できます。中小企業のみなさんはもちろん、支援機関のみなさんの企業支援の現場でも、ぜひご活用ください。