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ロカベン活用の現場「ウッド・ハブ合同会社」 店舗や工場等の中規模建築に「木造」の選択肢を与えたい

商店街・まちづくり
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ローカルベンチマーク(ロカベン)は、「財務(財務情報)」「非財務情報」の両面から、経営の健康状態を分析・診断する「企業の健康診断ツール」です。

事業者と支援者の「対話ツール」としてロカベンを活用することで、経営課題の整理や強みの発見、経営改善につなげることができます。

今回は、店舗や工場などの中規模建築を「木造」で設計し、施工をサポートする企業の伴走型支援にあたって、ロカベンを対話ツールとして活用した事例を紹介します。ロカベンの「4つの視点」からの傾聴と対話を通じて、課題の発見、目標の明確化、対応策の検討につなげています。

ウッド・ハブ合同会社
支援者

公益財団法人 にいがた産業創造機構
(新潟県新潟市中央区万代島5−1 万代島ビル 9階)

支援企業

ウッド・ハブ合同会社

企業概要 木造建築の構造設計、接合金物の開発、非住宅木造建築のコンサルティング
所在地 新潟県三条市桜木町12-38 三条ものづくり学校201号室
URL https://woodhub-llc.com/外部リンクはこちら

店舗・工場などの中規模木造建築を強みに創業

店舗・工場・医院などの「中規模建築」は、梁や柱などに鉄骨を使う「鉄骨造」が主流である。これに対して、ウッド・ハブ合同会社は、鉄骨ではなく木造の中規模建築の設計に関わってきた。

實成社長

「中規模木造建築は人や環境に優しい建築ですが、建設コストが高いイメージがあり、普及が進んでいません。しかし合理的な構造設計と適切な接合金具を使うことにより、鉄骨造と比較しても十分に競争力のある、コストを抑えた建築が可能です(實成社長)」

實成康治社長は、2015年に同社を創業。中規模木造建築の構造設計、接合金具の開発ノウハウなどの技術力を強みに、業績を伸ばしてきた。多雪地に立つ倉庫、2階建てのクリ二ック、工場、保育園など、同社の実績は数多い。だがその一方で、木造中規模建築が広がっていかないことに、行き詰まりも感じていたと、實成社長は振り返る。

にいがた産業創造機構(NICO)では、創業時の資金調達から同社を支援してきたが、創業後のフォローアップの一環として、芳賀マネージャーからNICOの伴走支援事業への参加を提案した。

芳賀氏

「NICOで実施する伴走支援事業は、経営者との徹底した対話を通じて、目に見えない経営課題を発見し、解決していく支援です。同社への伴走支援は、2021年10月から課題設定に約半年、さらに2022年4月から課題解決に約1年をかけて行いました(芳賀氏)」

この伴走支援にあたって、課題発見のために使われたのが、ローカルベンチマーク(ロカベン)である。

▲多雪地に建つ倉庫(外観)

▲多雪地に建つ倉庫(内観)

▲一般地域に建つ店舗(外観)

▲一般地域に建つ店舗(内観)

▲バイク店(外観)

▲クリーニング工場(内観)

「傾聴と対話」を通じて、経営者の本音を引き出す

同社の伴走支援にコンサルタントとして携わった酒井氏は、主にロカベンの「4つの視点」シートを対話ツールに活用し、課題を洗い出していった。これは、①経営者、②事業、③企業を取り巻く環境・関係者、④内部管理体制の4つの視点から現状を分析していく。

酒井氏

「4つの視点は、いずれも企業を理解するために欠かせない要素であり、経営全般を俯瞰するのにとても役立ちます。ただし、これはあくまでも『ツール』です。真の課題を見つけるためには、傾聴と対話を通じて、経営者の本音を引き出していく作業が欠かせません。(酒井氏)」

この作業を、酒井氏は「壁打ち」と表現する。手を変え、品を変え、さまざまな角度から質問し、返ってきた言葉に、また質問を投げ返す。じっくり経営者と向き合うなかで、少しずつ本音が見えてくるのだと言う。

實成社長

「酒井さんからは、『本当は何をしたいのですか』と問われ続けていました。なんのために創業したのか、そもそも何がしたいのか。日々の仕事に追われていると、そんなことを考えることもありません。また、社員から聞かれることもありません。それを言葉にして表現することで、頭の中を整理することができました(實成社長)」

傾聴と対話を繰り返しながら、酒井氏は4つの視点で「現状」について整理。「将来目標」を明らかにし、現状と目標のギャップを埋めるための「課題」と課題を解消するための「対応策」をロカベンシートにまとめていった。

實成社長

「やりたいこと、そのための課題や目標が明確になりました。また、言語化したことで、社員と会社の方向性を共有することができました(實成社長)」

俯瞰的・客観的な視点から会社を見るきっかけになり、いままで見えなかった課題にも気づくことができたと、實成社長は言う。

木造も中規模建築の選択肢となる社会の実現をめざす

本当にやりたかったことは何か。ロカベンを通じた対話のなかで、實成社長が行きついた答えが、「中規模木造の社会実装」だ。木造も店舗や倉庫などの中規模建築の選択肢となる社会を実現することだった。安全性とコスト合理性を兼ね備えた設計を行うためには接合金物やプレカットの知識が必要な事など、中規模木造建築の設計に必要な知識を広げていく必要があると言う事が課題だった。

實成社長

「その対応策の一つとして、プレカット工場や建材商社等のクライアントを対象とした有償サポートサービスを開発しました。構造設計や非住宅木造に対する営業サポートをメニュー化したことにより、クライアントが中規模木造を選択しやすくなることを目指しました。(實成社長)」

また、中規模木造建築への正しい理解や木質構造設計ができる人材の育成を目的としたセミナーを定期的に開催している。

いま、實成社長が「中規模木造の社会実装」に向けた取り組みの一つとして進めているのが、中規模木造建築の「規格化」である。構造設計、接合金具、プレカット部材の3つをパッケージ化することで設計・施工のさらなる合理化を図り、鉄骨に対しての価格競争力も高めていきたいと言う。

政府は、2050年までに温室効果ガスの排出量を全体としてゼロとすることをめざしている。カーボンニュートラルな素材である木を使った「中規模木造建築」への関心は今後ますます高まっていくはずだ。

▲パッケージ化フレームの例

2024年12月23日

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