中小企業庁担当者に聞く「ものづくり補助金(令和6年度補正)」
「ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金(ものづくり補助金)」は、中小企業・小規模事業者の革新的な新製品・新サービスの開発や海外事業による国内の生産性向上に必要な設備投資等の一部を補助する制度です。対象となる業種は製造業だけではありません。卸売業・小売業・サービス業など幅広い業種が対象となっています。
ものづくり補助金は、平成24年度補正でスタートしてから、都度、制度の見直しがなされており、令和6年度補正についても、制度の見直しがされているため、今回は、そのポイントについて、中小企業庁の担当者にお話をうかがいました。

ものづくり補助金の概要
ものづくり補助金(令和6年度補正)では、製品・サービス高付加価値化枠とグローバル枠の2つの枠が設けられました。
- ●製品・サービス高付加価値枠
- 革新的な新製品・新サービスの開発のための取り組みが対象です。生産プロセス等の省力化の取り組みや、単純な設備の更新は対象外となっています。補助上限額は、従業員数によって異なり、750万円~2,500万円、補助率は中小企業1/2、小規模事業者・再生事業者が2/3となっています。
- ●グローバル枠
- 輸出やインバウンド対応などの海外事業によって国内の生産性を向上させる事業が対象です。補助上限額は、従業員数に関わらず3,000万円、補助率は中小企業1/2、小規模事業者が2/3となっています。
なお、ものづくり補助金では、機械装置・システム構築費、専門家経費、原材料費などが補助対象ですが、グローバル枠の海外市場開拓(輸出)に関する事業については、本事業で開発する新製品・新サービスの海外展開を強化するため、広告宣伝・販売促進費等も補助対象となっています。
■ものづくり補助金の補助上限額・補助率・対象経費
項目 | 製品・サービス高付加価値化枠 | グローバル枠 |
---|---|---|
目的 | 革新的な新製品・新サービスの開発の取り組みを支援 | 海外事業を実施し、国内の生産性を高める取り組みを支援 |
補助上限額 (補助下限額100万円) |
従業員数 5人以下:750万円 6~20人:1,000万円 21~50人:1,500 万円 51 人以上:2,500万円 |
3,000万円 |
補助率 |
中小企業:1/2 小規模事業者等:2/3 |
中小企業:1/2 小規模事業者等:2/3 |
対象経費 |
機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 |
機械装置・システム構築費(必須)、技術導入費、専門家経費、運搬費、クラウドサービス利用費、原材料費、外注費、知的財産権等関連経費 (グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業のみ)海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費 |
基本要件について
ものづくり補助金では、製品・サービス高付加価値化枠、グローバル枠の双方に求められる基本要件があります。ここで簡単に説明させていただきます。詳細については、最新の公募要領を必ずご確認ください。
- ●基本要件①~③は、すべての事業者が満たす必要あり
- 申請にあたっては、以下の基本要件①~③のすべてを満たす、補助事業終了後の事業計画(3~5年)を策定する必要があります。加えて、従業員21名以上の事業者については、基本要件④も満たす必要があります。
基本要件① 付加価値額の増加要件 |
付加価値額(営業利益+人件費+減価償却)の年平均成長率が+3.0%以上増加 |
---|---|
基本要件② 賃金の増加要件 |
1人あたり給与支給総額の年平均成長率が事業実施都道府県における最低賃金の直近5年間の年平均成長率以上 または給与支給総額の年平均成長率が+2.0%以上増加 |
基本要件③ 事業所内最低賃金要件 |
事業所内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+30円以上の水準 |
基本要件④ 従業員の仕事・子育て両立要件 |
次世代育成支援対策推進法に基づく一般事業主行動計画を公表すること(従業員21名以上の場合のみ) |
基本要件をご覧いただくと分かると思いますが、ものづくり補助金では、物価高や賃上げ・最低賃金引上げ、人手不足等の事業環境の変化に対応するため、“稼ぐ力”を強化することが目的の一つとなっています。
ちなみに、以前のものづくり補助金では、補助事業で一定の収益が発生した場合に一部を返納していただく収益納付の制度がありましたが、第19次公募から収益納付は求めないこととなりました。
ただし、基本要件②③においては目標未達の場合返還を求める場合があります。要件未達成の考え方は公募要領に記載の上、概要版においても詳細に解説しておりますので、ご参照ください。
グローバル枠について
グローバル枠での申請に際しては、基本要件に加え追加の要件を設けています。補助対象経費の1/2以上が海外事業、需要に係るものであること等詳細に設定されていますので、こちらについてもご活用に際しては必ず公募要領をご参照ください。
なおグローバル枠は、あくまで国内拠点の生産性向上を目的としたものであり、日本国内に本社および補助事業の実施場所(工場や店舗等)を有する事業者を対象としています。
グローバル枠については、以下の4つの事業が対象になります。
グローバル要件① 海外への直接投資に関する事業 |
例)国内事業と海外事業の双方を一体的に強化し、グローバルな製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、国内拠点の生産性を高めるための事業など |
---|---|
グローバル要件② 海外市場開拓(輸出)に関する事業 |
例)海外展開を目的とし、製品・サービスの開発・改良、ブランディングや新規販路開拓等に取り組む事業など |
グローバル要件③ インバウンド対応に関する事業 |
例)製品・サービスの開発・提供体制を構築することで、海外からのインバウンド需要を獲得する事業など |
グローバル要件④ 海外企業と共同で行う事業 |
例)外国法人との共同研究・共同事業開発により、新たに成果物を生み出す事業など |
大幅賃上げ特例と最低賃金引上げ特例
ものづくり補助金の政策目的の一つに、持続的な賃上げがあります。このことから、賃上げに関わる二つの特例が設けられています。
●補助上限額が引き上げられる「大幅賃上げ特例」
大幅賃上げ特例は、給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上(基本要件+2.0%)、事業所内最低賃金が最低賃金+50円以上(基本要件+30円以上)の目標値を設定した事業者については、従業員規模に応じて補助上限額が引き上げられる特例です。
ただし、大幅賃上げ特例では給与支給総額及び事業所内最低賃金のうちいずれかの目標が未達の場合は、未達成率に応じて補助金の返還を求める場合があります。こちらも目標未達成の考え方は公募要領に記載の上、概要版においても詳細に解説しておりますので、ご参照ください。

従業員数5人以下 | 補助上限額から最大100万円 |
---|---|
6~20人 | 補助上限額から最大250万円 |
21~50人 | 補助上限額から最大1,000万円 |
50人以上 | 補助上限額から最大1,000万円 |
- ●補助率が2/3に引き上げられる「最低賃金引上げ特例」
- 最低賃金引上げ特例は、全従業員のうち最低賃金+50円以内で雇用している従業員が30%以上いる事業者が、ものづくり補助金を利用する場合に、補助率を1/2から2/3に引き上げる特例です。力強い賃上げの実現に向けて対応する中小企業等の取組を支援し、賃上げ環境を整備するためにこの特例を創設しました。
申請にあたってのアドバイス・注意点
以上、ものづくり補助金の概要についてご説明しました。ここからは、申請にあたってのアドバイスや注意点についてご説明します。
- ●申請に必要な「事業計画書」の作成
-
申請には、補助金の要件を満たした事業計画書(3~5年)が必要です。事業計画書には、自社の現状分析、課題の設定、市場分析やターゲット層、革新性・差別化のポイント、実現可能性、実施効果などを具体的に記載します。特に大切なのは、事業者が「やりたいこと」だけを記載するのではなく、本事業の成果が寄与すると想定している具体的なユーザー、マーケット及び市場規模等についても把握することや、定性的・定量的情報を用いて、具体的な理由や根拠を示しながら詳細に記載することです。公募要領においても「事業計画書作成のポイント」をまとめておりますので、ご参照下さい。
また19次公募から、事業計画はWEBフォーム形式に記入することになりました。フォームに長い文章を直接入力するのは難しいと感じる方も多いかもしれません。まずは公募要領のページから「参考様式_事業計画書記載項目(Word形式)」をダウンロードして、あらかじめWordファイルで事業計画を作成しておくことをおすすめします。完成後にWEBフォームへコピー&ペーストすると、スムーズに申請できます。
- ●審査項目・加点項目について
-
補助金の審査は、外部有識者による評価で行われます。評価の基準となる「審査項目」は、公募要領に詳しく記載されていますので、事業計画書等を作成する際には、必ず審査項目を確認してください。また、一定の基準を満たした事業者については、書面審査に加えて、外部有識者による口頭審査があります。提出された事業計画書をもとに、質疑応答を行っていいただきます。
ものづくり補助金には、審査時に有利になる加点項目が設定されています。加点項目は公募回ごとに変更される場合があるため、必ず最新の公募要領をご確認ください。
- ●申請準備は余裕を持って
-
申請時のミスや不備を防ぐためにも、余裕を持って早めに準備を進めてください。ものづくり補助金の申請に必ず必要になるGビズIDプライムアカウントの発行には一定期間を要します。また、従業員が21名以上の場合、基本要件の一般事業主行動計画書の策定・公表をする必要がありますが、公表には1~2週間を要します。加点項目のなかにも取得や登録までに時間を要するものがありますので、余裕をもった申請をお願いします。
- ●説明会・お問い合わせについて
-
ものづくり補助金を初めて利用される事業者のために、公募受付の約1カ月前に説明会を開催しています。「要件についてよく分からない」「申請の流れがよく分からない」「事業計画書になにを書けばいいのか不安」という方は、ぜひご参加ください。
なお、応募申請書類のお問合せについては、ものづくり補助金事務局サポートセンターにおいて電話・メールで受け付けていますので、こちらにお問い合わせください(お問い合わせ先についてはものづくり補助金総合サイトでご確認ください)。
関連記事
ものづくり補助金のショート動画、ついに公開/ミラサポplusの紹介チラシ完成
補助金制度をまだ知らない、お忙しい中小企業・小規模事業者のみなさまにも気軽にご覧いただけるよう、各補助金のポイントを1分以内で紹介するショート動画を……