中小企業庁担当者に聞く「中小企業省力化投資補助金の活用状況とポイント」
中小企業省力化投資補助金は、中小企業等が人手不足を解消し、生産性向上や売上拡大、そして賃上げを実現できるように、ICTやIoT、AI、ロボット、センサー等の設備・システムの導入を支援する補助金です。[カタログ注文型]と[一般型]の2種類があり、それぞれ基本要件や補助対象、申請方法が異なります。
[カタログ注文型]は、カタログに登録された汎用製品から、自社の課題に合わせて省力化製品を選択するタイプで、2024年6月から申請がスタートしました。[一般型]は、省力化効果のあるオーダーメイド(セミオーダーメイド)性のある設備導入やシステム構築などに対応したタイプで、2025年3月から申請が開始されています。
今回は、この省力化投資補助金の活用状況や申請のポイント等について、中小企業庁の担当者にお話をうかがいました。
登録製品が充実、活用範囲が拡がった[カタログ注文型]
省力化投資補助金[カタログ注文型]は、「製品カタログ」に登録されている省力化製品の中から、自社の課題や業種、業務プロセスに合った製品を選び、販売店(販売事業者)と共同で申請する補助金です。省力化製品を導入して、「労働生産性の年平均成長率3%向上」を目指す事業計画に取り組む企業が対象となります。
公募当初は登録製品が数十件にとどまっていましたが、現在は登録製品が1,500件を超え、登録販売事業者も約2,500社を超えました(2025年11月現在)。対象業種や製品カテゴリも拡大し、より多くの事業者が活用しやすい補助金となっています。これにともない、交付申請や交付決定の件数も大きく伸びています。
製品カタログは随時更新されていますから、以前に補助金の利用を検討した際には自社の課題に合った製品が見つからなかったという事業者の方も、定期的に確認してみてください。たとえば、飲食店ではスチームコンベクションオーブン、建設会社ではトータルステーション(測量機器)の導入などに活用されています。
[カタログ注文型]の補助対象は、カタログに登録された製品に限られています。登録製品は「省力化効果」が登録時点で確認されているため、他の補助金と比べて申請書類の作成が簡便で、申請の負担が軽減されています。
また、申請は「随時公募」となっており、いつでも申し込みが可能です。さらに「採択=交付決定」となるため、申請から交付決定まで最短1カ月でスピーディーに事業をスタートできます。幅広い業種で、既存事業に活用でき、手続きが簡単なため、事業者にとって利用しやすい補助金ではないでしょうか。
■省力化投資補助金[カタログ注文型]の補助率と補助上限額
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限額 | 大幅な賃上げを行う場合 |
|---|---|---|---|
| 5名以下 | 1/2 | 200万円 | 300万円 |
| 6~20名 | 500万円 | 750万円 | |
| 21名以上 | 1,000万円 | 1,500万円 |
※各申請における補助金の合計額が補助上限額に達するまでは、複数回の応募・交付申請が可能になります。
- ●省力化製品を導入し、「労働生産性 年平均成長率3%向上」を目指す事業計画に取り組むものを対象とします。
- ●補助上限額がアップする【大幅賃上げ特例】の適用を受ける場合は、事業終了時に①給与支給総額+6%以上かつ、②事業場内最低賃金+45円以上とする計画を策定し申請する必要があります(補助上限額を引き上げたが事業終了までに賃上げ未達の場合は、補助額の減額となります)。
オーダーメイドの設備・システム導入ができる【一般型】
省力化投資補助金[一般型]は、オーダーメイド(セミオーダーメイド)性のある設備・システム導入を支援する補助金で、「労働生産性の年平均成長率4%向上」を目指す事業計画に取り組むものが対象となります。
「オーダーメイドの設備・システム」というと、ハードルが少し高く感じるかもしれませんが、汎用製品を組み合わせた設備導入も対象となるため、幅広くご活用いただけます。
[一般型]は、ものづくり補助金などと同じように「公募回制」を採用しており、公募の申請受付期間に合わせて申請します。
省力化投資補助金は、原則として「既存事業の省力化」を進めるものです。[カタログ注文型]では登録製品の省力化効果をあらかじめ認定していますが、[一般型]は事業者が導入設備やシステムの省力化効果を説明しなくてはなりません。このため、申請書類の「事業計画書」では、業務量削減の割合(設備導入前後の差)を数値化した「省力化指数」を算出し、記載する必要があります。
省力化指数は、「省力化計算シート※」で算出できます。Excelのシートに、工程ごとの作業時間数を入力すると、業務プロセス図が自動生成され、省力化指数や投資回収期間が自動的に計算されます。
この「省力化計算シート」は、補助金申請のためのツールであると同時に、業務プロセスや作業工程を“見える化”する業務改善ツールとしても有用です。申請目的にとどまらず、自社の業務効率化を検討するきっかけとしても、ぜひ活用してみてください。
※中小企業省力化投資補助金[一般型]資料ダウンロードページの「【指定様式】事業計画書(その3)」に含まれています。
■省力化投資補助金[一般型]の補助率と補助上限額
| 従業員数 | 補助率 | 補助上限額 | 大幅な賃上げを行う場合 |
|---|---|---|---|
| 5名以下 |
中小企業 小規模・再生事業者 |
750万円 | 1,000万円 |
| 6~20名 | 1,500万円 | 2,000万円 | |
| 21~50名 | 3,000万円 | 4,000万円 | |
| 51~100名 | 5,000万円 | 6,500万円 | |
| 101名以上 | 8,000万円 | 1億円 |
※補助金額1,500万円までは1/2もしくは2/3、1,500万円を超える部分は1/3
- ●省力化効果のあるオーダーメイド・セミオーダーメイド性のある設備やシステムなどを導入し、「労働生産性 年平均成長率4%向上」を目指す事業計画に取り組むものを対象とします。
- ●補助上限額がアップする【大幅賃上げ特例】の適用を受ける場合は、①給与支給総額の年平均成長率+6.0%以上増加 ②事業場内最低賃金が事業実施都道府県における最低賃金+50円以上の水準とする必要があります(最低賃金引上げ特例事業者、各申請枠の上限額に達していない場合は除く。上記①、②のいずれか一方でも未達の場合、各申請枠の従業員規模区分別の補助上限額との差額について補助金を返還)。
- ●補助率が2/3にアップする【最低賃金引き上げ特例】の適用を受ける場合は、2024年10月から2025年9月までの間で、「当該期間における地域別最低賃金以上~2025年度改定の地域別最 低賃金未満」で雇用している従業員が、全従業員数の30%以上である月が3か月以上あることが条件となります。(小規模・再生事業者は除く。補助金額1,500万円までが引き上げ対象)。
省力化投資補助金の「大幅賃上げ特例」
省力化投資補助金は、中小企業等が人手不足に対応しながら、効率性・生産性を高めるとともに、賃上げにつなげることを目的しています。
省力化設備やシステムへの投資を通じて業務プロセスを改善し、売上や付加価値を高めることで、従業員の賃上げを実現し、持続的な経営基盤の強化を図るという「好循環」を生み出すことをめざしています。
こうした目的を後押しするために、省力化投資補助金では「大幅賃上げ特例」が設けられています。これは、従業員の賃上げに積極的な事業者については、補助上限額を引き上げる優遇措置です。つまり、賃上げを前向きに進めるほど、より手厚い支援を受けられるという設計になっています。ぜひ省力化投資補助金を活用し、生産性の向上と人材への還元の両立に挑戦してください。
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