経営課題にあわせた、ITツールを。「IT導入補助金」
IT化・デジタル化を進める際の公的な支援策の一つに「IT導入補助金」があります。補助金の上限は450万円と高く、高機能なITツールの導入も可能になっています。一方で、IT化・デジタル化についてのノウハウのない中小企業・小規模事業者にとって、ハードルが高いのも事実です。
今回は、中小企業・小規模事業者が「IT導入補助金」を活用する際に、どんなことに気をつければ良いかについて、独立行政法人中小企業基盤整備機構 生産性革命推進事業室の丸古雅典様にお話しをうかがいました。
今年度(令和二年度)のIT導入補助金の特徴は?
前年度と今年度の違いは、主に三つあります。
一つは、「通常枠」に加えて、新型コロナウイルス感染症が事業環境に与えた影響への対策及び同感染症の拡大防止に向け、具体的な対策に取り組む事業者によるITツールの導入を優先的に支援する「特別枠」が設けられたことです。
特別枠を利用する際には、「甲:サプライチェーンの毀損への対応(顧客への製品供給を継続するために必要なIT投資を行う)」、「乙:非対面型ビジネスモデルへの転換(非対面・遠隔でのサービス提供が可能なビジネスモデルに転換するために必要なIT投資を行う)」、「丙:テレワーク環境の整備(従業員がテレワーク(在宅勤務等)で業務を行う環境を整備するに必要なIT投資を行う)」の3つのうち、いずれか一つの目的に該当するITツールを導入することが要件となります。
通常枠の補助率が2分の1であるのに対して、特別枠の補助率は最大4分の3に拡充しています。また特別枠の特例として、通常枠では補助対象にならないPC・タブレット等のハードウェアにかかるレンタル費用が補助対象となります。公募前(2020年4月7日以降)に購入したITツール等についても補助対象となる場合があります。
- 特別枠
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二つ目は、補助額の下限が40万円から30万円に引き下げられたことです。下限が引き下げられたことで、従来よりも少額のIT投資も補助対象となりました。小規模事業者の方も活用しやすくなったのではないかと思います。
三つ目として、一定の賃金引上げが、申請要件(必須要件)あるいは加点項目となりました。通常枠においては、A類型を申請する事業者は加点項目となり、B類型を申請する事業者は申請要件(必須要件)となります。 特別枠においては、「甲ツール」のみの導入を希望する事業者は、補助申請額が30万~150万円未満である場合は加点項目、補助申請額が150万~450万円である場合は申請要件(必須要件)となります。また、特別枠において、「乙ツール」もしくは「丙ツール」の導入を希望する事業者は、補助申請額が30万~300 万円未満である場合は加点項目、補助申請額が300万~450万円である場合は申請要件(必須要件)となります。
どのような種類のITツールの申請が多いですか?
ITツールの種類については数多く存在することから、一概には言えませんが、財務・労務・顧客管理など、バックオフィス業務の効率化を目的にしたITツールは多数申請されているほか、業種ごとの特性に合わせたITツールについてもご申請をいただいております。
また、今年度は、新型コロナウイルス対策として設けられている「丙:テレワーク環境の整備」に必要なITツールの導入を希望する事業者も増えています。
IT導入補助金2020サイトでは、業種別のIT導入補助金の活用事例、経営課題にあわせたITツールの導入例なども紹介しています。このような情報を参考に、ITツールの導入を検討すると良いと思います。
IT導入補助金の申請は、どこに相談すれば良いですか?
IT導入補助金は、IT導入支援事業者(ITベンダー・サービス事業者)の支援のもとでの申請となります。IT導入支援事業者から提案を受けて申請する事業者も多いと思いますが、申請者のニーズ(課題解決)とITツールのミスマッチに気をつけてください。
IT導入補助金は、中小企業・小規模事業者が「自社の課題やニーズ」に合ったITツールを導入する経費」を補助するためのものです。補助金申請のスタートは自社の経営課題の把握から始めてください。まず、お近くのよろず支援拠点、商工会、商工会議所、ITコーディネーターなどの支援機関で経営課題について相談し、課題解決のためのITツールを検討することをおすすめします。
またITツールに関心があっても、ノウハウがないため、ITツールの導入や定着に至らない企業もたくさんあります。このような中小企業・小規模事業者をサポートするために、中小機構は「中小企業デジタル化応援隊事業」を実施しています。これは、IT活用を支援する専門家を「中小企業デジタル化応援隊」として選定し、デジタル化・IT活用をすすめようとする中小企業等を支援する制度です。
対象となるITツール(デジタルツール)は、テレワーク、ECサイト、ホームページ、RPA、AI、グループウェア、セキュリティ、ERP、オンライン会議など幅広く、使いやすい制度となっています。
支援機関で経営課題を見つけたら、ITツール導入の計画を検討したうえで、導入支援事業者を決定し、IT導入補助金の導入・活用を図るのも良い方法ではないでしょうか。
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