事例から学ぶ!「商店街を、もっと元気に」
いま商店街は、来街者の減少、空き店舗の増加、店主の高齢化、後継者不足など、様々な課題に直面しています。ライフスタイルの変化、郊外型商業施設の出店などにより、地域商業をめぐる環境が大きく変わるなかで、活力を失いつつある商店街も少なくありません。
商店街は、地域の商業集積エリアであるとともに、地域コミュニティの拠点としての役割も担っていました。商店街を元気にすることは、地域コミュニティの再生、地域の魅力向上にもつながります。今回は、ミラサポplusの「事例ナビ」から、商店街活性化のヒントとなる事例を紹介します。
回遊型イベントで、商店街を活性化する
当たり前の話ですが、商店街の活性化は「商店街のなかの繁盛店を増やすこと」に尽きます。そのうえで、それぞれのお店の繁盛が商店街全体のにぎわいにつながる仕組みや環境を整えていくことが大切です。
福井県の敦賀市商店街連合会では、新型コロナの影響により商店街の集客が伸び悩むなかで、商店街を回遊する「スタンプラリー」を開催しました。
この商店街では以前から、店主が地域住民に専門知識を提供するワークショップ「まちゼミ」の開催をしたり、個店の活性化に向けた研修(全国商店街支援センター繁盛店づくり支援事業)を開催したり、個店の魅力を高める活動を行っています。
また、岡山県岡山市の奉還町商店街は「ぐるり奉還町」と銘打ち、参加店のレシートを別の参加店に提示すると、サービスや特典を受けられるイベントを実施しました。イベントきっかけに「お店が紹介しあう」ことで、商店街全体の集客力を高めることが狙いです。
このような回遊型イベントは、集客力のあるお店やスポットを「集客の核」にしながら、商店街全体のにぎわい創出につなげていくのに有効です。そして、その前提となるのが、それぞれのお店の魅力を磨き、繁盛店を増やすことです。
福井県敦賀市では、敦賀市商店街連合会と敦賀商工会議所が連携して、市中心市街地の商店街でのスタンプラリーを実施し、いち早く地域の消費活動と経済活動を応援しようというキャンペーンが開催された。
感染症流行により人通りは減少し、緊急事態宣言が解除された後の2020年6月においても来街者は大きく減少したままであった。 売上げを維持するため、来街者の回遊性を高める方法を考え、参加店のレシートなどを別の参加店に提示すると、サービスや特典を受けることができる「ぐるり奉還町」を実施。イベント期間中は複数店舗を回遊する利用客が増加し、各店舗の売上げは平時に比べ平均10%前後増加。「紹介してもらって、今まで気付かなかった魅力的なお店を知ることができた。」と利用客の評価も高い。
学生・若者とのコラボによる、にぎわい創出
「最近の来街者は、地域のお年寄りばかり」とぼやいている商店街も多いと思います。しかし、これはチャンスかもしれません。とくに、免許返納をしたお年寄りにとって、地域商業の場としての商店街の役割は大きくなっています。高齢社会が進むなかで、ビジネスチャンスを広げるうえでも、シニア客の視点から、店舗のファザード・レイアウト・接客等などを、それぞれのお店で見直してみてはいかがでしょうか。それがお店の強みとなり、郊外型の大型ショッピングセンターとの差別化につながる可能性もあります。
さて一方で、若者の来街を増やすことは、商店街のにぎわい創出に欠かせません。安古市町商工会では、地域の大学・短大とコラボした商品開発・イベントを実施し、若者を商店街に呼び寄せる活動を進めています。このようなコラボプロジェクトは、単発ではなく継続的に実施することが大切です。とくに学校等とのコラボの場合、カリキュラムや年間行事に組み込む必要があるので、早めに準備し、徐々に拡大し、最終的に「定例化」していくことを考えましょう。
その他、デザイン専門学校とコラボして、商店街をランウェイにした卒業ファッションショーを行っている事例もあります。若者に商店街の存在を意識してもらうことは、商店街の顧客層を広げ、将来の顧客獲得につながります。
学生とのコラボで開発された商品が、若年層の新たな需要を喚起しただけではなく、コラボプロジェクトのプレスリリース(学生のラジオ出演含む)や、学生の家族や教育機関関係者、地域住民等への広報により、個社・個店自体の認知度が向上し、既存の商品も含めた売上げ増加につながっている。学生から「コラボ先のお店と一緒に新商品・サービス開発や販路開拓に取り組む中で、今まで知らなかった地域のお店について興味・関心が高まり、地元への就職も考えるようになった。」という声が聞かれるなど、コラボプロジェクトは学生と地域の接点としても重要な取組となっている。
「商店街ブランド商品」を、共同で企画開発
新型コロナウイルスの感染拡大は、飲食店を中心に大きな打撃を与えました。テイクアウトに力を入れることで難局を乗り切ろうとした飲食店も多かったのではないでしょうか。
このようななか、京都府宇治市の宇治橋通り商店街では、商店街の店主が合同で統一したパッケージデザインの「崖っぷち弁当」を販売しました。包装パッケージは統一していますが、お弁当の中身はそれぞれのお店の個性を活かしたオリジナルのものです。「崖っぷち弁当」はネーミングの妙もあり、地元のマスメディアにも大きく取り上げられました。ニュースを見て来街する客も多かったとのことです。
その後も、同商店街ではオリジナルPR動画の制作・配信、タクシー会社とコラボしたデリバリーサービス、スタンプラリーなどの施策も実施しています。
「商店街ブランド商品」は、お店によって業態・商品が異なり、また特色も異なるため、企画開発が難しくなりがちです。この事例では、デザインとネーミングを統一しただけで、その中身については各店舗に任せることで、商品開発への参加ハードルを下げています。
個店の取り組みでは、どうしても情報発信に限界がありますが、商店街ブランド商品とすることで、マスメディアに取り上げてもらいやすくなり、ニュース性・情報発信力が高まります。商店街全体の集客力・販売力を高めるうえでも、「商店街ブランド商品」の企画開発は一つの方法です。
京都府宇治市の宇治橋通り商店街振興組合が4月より実施しているテイクアウトの取組み「崖っぷち弁当」が、複合的な展開を見せている。苦肉の策として始まったこの取組みは地域の人々に支持され、さらには新規顧客の獲得につながるなど手ごたえを感じる店主もでてきているという。商店街は利用者に感謝の気持ちを込め、先月からスタンプラリーも行っている。
コロナ禍のなかで、様々なアイデアで集客力を高める。
「崖っぷち弁当」の事例もそうですが、コロナ禍のなかで集客を図るため、多くの商店街が様々なイベント・プロジェクトを実施してきました。
たとえば、静岡県富士市の吉原商店街は、駐車場を利用したドライブインシアターを実施しています。もともと空き店舗を活用した映画上映などを行ってきましたが、コロナ禍での3密を避ける意味で、このような形になりました。
岩手県盛岡市の盛岡大通商店街では、地元の飲食店のお弁当を一堂に集めて販売するイベントを実施しました。コロナ禍の飲食店のテイクアウトを応援するイベントです。
佐賀県有田町の本町商店街では、レジ前の飛沫防止のビニールカーテンにアーティストが絵を描くプロジェクトを実施しています。
もともと商店街は、お店にとって商いの場であるとともに、住まいの場、暮らしの場でもあります。コロナ禍という未曽有の困難のなかで、商店街のお店のつながりの深さが再確認され、様々な助け合いイベントが実施されました。これは、商店街の良い点であり、今後の活性化につながるヒントが隠されていると思います。
車に乗ったまま野外に設置されたスクリーンで映画を観賞する「ドライブインシアター」が今月7日(日)から12日(金)まで、静岡県富士市の吉原商店街で開催された。このイベントは、新型コロナウイルス感染症の拡大を防止するため、3密(密集・密閉・密接)を避ける新しい生活様式が求められるなか、「感染を気にせずに安心して映画を楽しんで、明るい気持ちになってほしい」との思いから企画された。
岩手県盛岡市の盛岡大通商店街協同組合は6月21日(日)、商店街の歩行者天国の会場で、テイクアウトサービスを行っている地元の飲食店がつくる弁当を一堂に集めて販売するイベント「お弁当パラダイス」を開催。
店舗等のレジ周りに飛沫防止のために設置されたビニールカーテンに、アーティストが絵を描くプロジェクト「レジ前おむかえアート」が、コロナ禍で疲弊した来店客や店主の心を和ませている。
それぞれのお店が魅力を磨くことが大切
繰り返しになりますが、商店街の活性化は「商店街の繁盛店を増やすこと」に尽きます。商店街は個店の集合体です。それぞれのお店が、集客力・販売力を高めていくことで、商店街は活性化します。イベント・プロジェクトはあくまで一過性のもので、個店に魅力がなければ、持続的な集客にはつながりません。
では、お店の魅力を高めるにはどうしたら良いでしょうか。まずは周りを見渡してください。商店街のなかに、いくつかの「繁盛店」があるはずです。それは、行列ができる「ラーメン屋さん」だったり、新鮮さが自慢の「魚屋さん」だったり、地場産の野菜を売る「八百屋さん」だったりするかもしれません。そんな他店のアイデアのなかに、お店の磨きのヒントが隠されています。また、お互いに協力できる部分があれば、WIN×WINの関係が築ける可能性があります。これが商店街の良さでもあります。
一方で、「飲食店や鮮魚店ならいいけど、ウチのような店は郊外の大型ショッピングセンターに、価格でも品揃えでも太刀打ちできない」という声もあると思います。しかし、長年にわたって、その場所で商売が続いているのには、何らかの理由や何らの強みがあるはずです。
改めて、「なぜ、お客様は来店してくれるのか(来店動機)」、「どんなお客様が来店してくれるのか(ターゲット)」をもう一度考えてみましょう。直接、お客様に尋ねてみるのも良い方法です。自分では思ってもいなかった「強み」が見つかるかもしれません。
そして次に、お客様の気持ちになり、商店街通りに出て、お店の店頭を眺めてみましょう。本当にお店に入りたくなりますか。もっと開放的にして、店頭から店内が見えるようにした方が良くはないですか。
また、来店客数が伸びそうもなかったら、一人当たりの購入単価を増やすことを考えましょう。ターゲットの目線から、お店のPOP、商品の陳列方法、店舗のレイアウトを変えることで、売上が伸びる余地があるかもしれません。
今回は商店街活性化事例についてご紹介してきましたが、そのベースになるのは各店舗の活性化です。お店ごとに、売上拡大や後継者不足など、いろいろな課題があると思います。その解決のために、よろず支援拠点などの支援者・支援団体を通じて、専門家に相談し、アドバイスをもらうのも良い方法です。
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