メシの種
- 2020年12月17日
- 相談・情報提供
- 最終更新日:2021年04月16日
事業者のみなさま
新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明な状況が続いています。
このようななかで、小規模事業者がどのような姿勢・考え方でコロナ時代に対応するべきかについて、(独)中小企業基盤整備機構で中小企業支援アドバイザーとしてご活躍され、全国の小規模企業経営者と親交を深めてきた、(株)アテーナソリューション代表取締役の立石裕明氏とお話をいたしましたので、みなさまの経営のヒントにしていただければ幸いです。
※不定期に5回シリーズで配信させていただく予定です。
(中小企業庁 稲垣)
メシの種
突然ですが、小規模事業者のみなさまは、自分の〝 メシの種〟をしっかり認識していらっしゃるでしょうか。
というのも、意外と知らない、もしくは間違って認識している人が多いからです。
一番多い誤解が、「売上額が多い仕事を、メシの種だと思っている」パターンです。
恥ずかしながら、かつての私もその一人でした。
私が淡路島でホテル・旅館を経営していた当時、もっとも売上高が大きかったのは宴会です。
たくさんのお客様を迎え、豪勢な料理を出し、数時間、楽しい時間を過ごしてもらうだけで大きな売上が上がります。私は経営者として、宴会の注文をとることに力を注いでいました。
ところが、ある日、そんな自分がすごく間違っていたことに気がついたのです。
豪華な宴会ほど、原材料費が高くつくからです。
料理を作る、配膳する、片付けるといった人件費もかかります。
つまり、「売上」は大きかったものの、「利益」は大したことがなかったのです。
一方で、「利益」が大きかったのはスポーツ合宿でした。
淡路島には野球場などスポーツ施設が点在していて、小学生、中学生が合宿に来ることがありました。売上としての単価は安いものの、鯛の活造りは必要ありません。人件費もあまりかかりません。
実は、非常に「利益率」が高いサービスだったのです。
「あんまり儲からんと思ってたスポーツ合宿の子どもたちが、本当は大切なお客さんだったんか!?」
本当に驚きました。
自分の〝 メシの種〟はスポーツ合宿だった。
自分は、それまで間違った努力をしていたのか! と。
「売上と利益の表」を作ろう
私が、自分のメシの種に気づいたきっかけは、「売上と利益の表」を作ったことでした。
経理や会社の数字にうとい人でもわかる、簡単な表ですから、ぜひ作ってみてください。
作り方はこの2ステップだけです。
① 「売上額」が大きい商品・サービス・取引先を、1位から順に左の列に書く
② 「利益額」が大きい商品・サービス・取引先を、1位から順に右の列に書く
数字を書き入れたら、じっくり眺めてみましょう。そのうえで、「売上額」と「利益額」の順位が違う部分に注目してください。
電気工事会社(従業員3名・外注の職人あり)
売上額が大きい取引先 | 利益額が大きい取引先 | |||
---|---|---|---|---|
1位 | A社 | 1460万円 | B社 | 234万円 |
2位 | B社 | 913万円 | C社 | 70万円 |
3位 | C社 | 438万円 | 手間工事色々 | 60万円 |
4位 | 手間工事色々 | 329万円 | A社 | 55万円 |
5位 | E社 | 292万円 | E社 | 50万円 |
6位 | その他 | 225万円 | その他 | 45万円 |
この表は、とある地方で電気工事を手掛けている会社の「売上と利益の表」です。
注目すべきは、A社の売上額と利益額です。
A社からの下請け工事は、売上が1460万円と、全売上の約4割もあるのに、利益が55万円しかありません。
なんと、売上額では4位にしかならない「手間工事色々」の利益額60万円より低くなっています。
A社の利益が低い理由は、早朝や深夜に行う急な工事が多いことでした。
人件費がかさむうえ、急な依頼が多くて外注に頻繁にヘルプをお願いすることになり、外注費もかかります。
さらに、建材資材を多くストックしておく必要があり、その仕入れ費、倉庫代もあります。手形が長いのもネックでした。
これらの経費をすべて合計していくと、実は利益がほとんど出ない仕事であったわけです。
それに気づきづらくなるのは、やはり売上額の大きさです。
どうしても売上額に惑わされてしまい、大切なお客様として優先してしまいます。
しかし、この会社にとってA社は大切なお客様ではありません。
優先すべきは、「メシの種となる仕事」です。
この会社の「売上と利益の表」を見ながら話をしていたところ、メシの種は「手間工事」にあるのではないかという結果になりました。
個人宅や小さな商店から依頼される、数時間〜数日で終わるちょっとした電気工事です。
それまで、「知人に頼まれた」「紹介されて」などという、ある意味〝 ついで〟の仕事でしたが、本格的に営業して増やしていくことで、経営回復を実現しました。
資金繰りに困っていたのが、半年くらいで黒字化して、経営者の給料は2倍以上になったのです。
メシの種の誤解を解くことで、回復した会社は全国であちこちにあります。
「売上と利益の表」を作れば、メシの種が見えてきますので、ぜひ試してみてください。
事業者のみなさま!
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