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小規模企業のみなさま

  • 2020年11月16日
  • その他情報
  • 最終更新日:2021年04月16日
 

小規模企業のみなさま

 

新型コロナウイルスの感染拡大により、先行きが不透明な状況が続いています。
このようななかで、小規模企業がどのような姿勢・考え方でコロナ時代に対応するべきかについて、(独)中小企業基盤整備機構で中小企業支援アドバイザーとしてご活躍され、全国の小規模企業経営者と親交を深めてきた、(株)アテーナソリューション代表取締役の立石裕明氏とお話をいたしましたので、みなさまの経営のヒントにしていただければ幸いです。

※不定期に5回シリーズで配信させていただく予定です。
(中小企業庁 稲垣)

 

まず、「利益」を決める

前回、紹介した「立石流かんたん資金繰り表」では、あらかじめ「役員報酬(経営者給料)」を書き入れるよう紹介しました。

この理由は、多くの小規模企業の経営者が「会社のお金」と「個人のお金」をいっしょくたにしているからです。
同じ財布で管理しているようなもので、これも小規模事業者が「どんぶり勘定」になる理由となっています。

 

もちろん、私も小規模事業者の実態を知っていますから、ある程度、仕方がないことであるのは理解しています。
自分が出資して起こした事業ですし、借入金は個人の連帯保証がついていたりしますから、会社のお金も個人のお金も同じと言えないことはありません。

 

ただし、「会社のお金も自分のお金も同じ」と考えてしまうのはリスクを孕んでいます。
「事業の利益が出たら、その利益が自分の給料」としてしまう人が多いからです。

 

これはつまり、「利益が出なかったから給料は取らない」という意味でもあります。

そして、実際はこのパターンが実に多い。むしろ、まともに給料を取っている人が少ないとすら思えるほどです。
これでは、何のために事業を営んでいるのか、わかったものではありません。
経営の苦しさは、そのまま生活の苦しさ、人生の苦しさにつながってしまいます。

 

計算式を変える

繰り返しますが、私は「事業の利益=自分の給料」である小規模事業者の実態を否定していません。

小規模事業者の現実として、仕方がないことです。

 

では、どうすればよいかというと、その「利益」についての計算式を変えることです。

 

通常、利益は次のように計算されます。

【売上−経費=利益】

 

この計算式では、売上に対して経費が多すぎた場合、利益(≒自分の給料)が削られてしまいます。

そのため、次のように計算するようにしましょう。

【売上−利益=経費】

まず、利益(≒自分の給料)を決めて、売上から差し引くことで、使える経費が明確になるわけです。

これなら、ちゃんと「役員報酬(経営者給料)」を取りながら、事業を営んでいくことができます。

 

計算式を変えることで起きる変化

小規模事業者にとって、経費は大きな問題です。
大幅な売上アップが望めない場合にはなおさら、経費をいかに圧縮するかが利益(≒自分の給料)額のカギとなります。

 

ところが、先に利益(≒自分の給料)を決めておくと、必然的に使える経費額が明確になりますから、

そこに工夫が生まれてきます。

 

・使い回せる材料・資材はないか

・仕入れを最低限にする方法は

・もっと安い仕入先はないか

 

経費を安く抑える方法はいくらでもあります。
経営者の腕の見せどころです。

 

なぜ、利益を先に決めるのか

 

改めて、なぜ利益を先に決めるのかというと、「役員報酬(経営者給料)」は事業主の命を守るためのお金だからです。

利益(≒自分の給料)は、命銭。

 

毎日の生活はもちろんですが、事業を続ける気力・体力のためにも、

いつかあるかもしれない廃業のためにも、お金が必要です

 

私は、小規模事業者にはできれば1000万円、最低でも500万円の給料を取ってほしいと考えています。

 

というのも、小規模事業の経営者には、ワーク・ライフ・バランスが成立しづらいからです。
本心は休息の時間、レジャーの時間を取ってほしいと思うのですが、生活のすべてが仕事に直結しています。

 

旅館を経営していた私の母は、

 

仕事の合間の食事で

 

「たまには休みでも」

と言われ、

 

 

 

 

「今休んでる」

と返事をしていました。

 

本気で、食事の時間を休息だと捉えていたのでしょう。

いまだに強く記憶に残っています。

 

そんな生活を送る小規模事業の経営者のみなさん、考えてみてください。
もし、今の事業をやめてアルバイトをするとしたら、時給はいくらぐらいを希望しますか?

 

知恵も経験も多いみなさんですから、時給1000円程度は最低ラインではないでしょうか。

では、みなさんの労働時間は今、何時間ぐらいでしょうか。
仮に15時間で330日働いているとすると、時給1000円で495万円になります。約500万円です。

 

みなさんの仕事は時給1000円以下でしょうか。これはほぼ最低賃金です。
違うはずです。経験を積み、地域に貢献し、連帯保証もしている。

もっと素晴らしい価値を生み出していると私は強く感じます。

 

現状、年収500万円以下の経営者は、時給1000円以下で働いていることになります。

これでよいのでしょうか。

 

最低でも500万円、できれば1000万円というのは、途方もない夢物語ではありません。
現実なのです。
それだけ、小規模事業の経営者は働いています。価値を生み出しています。

 

ぜひ、先に利益( ≒ 自分の給料 = 命銭 )を決めてください。

 

前回の記事 (第2回)

職人から経営者へ

前々回の記事(第1回)

小規模企業には「伸び代」しかない!

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