担当者に聞く 令和5年度補正 ものづくり補助金 「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」とは
ものづくり補助金(ものづくり・商業・サービス生産性向上促進補助金)は、中小企業等が行う、革新的な製品・サービスの開発や生産プロセス等の省力化を行い、生産性を向上させるために必要な設備投資等を支援するものです。
令和5年度補正の予算の成立にともない、ものづくり補助金ではいくつかの点が変更になりました。
今回は、令和6年1月31日の第18次公募からスタートした「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」について、中小企業庁技術・経営革新課に話を聞きました。
なお、17次公募から開始をしている省力化(オーダーメイド)枠については、1月31日掲載の「担当者に聞く 令和5年度補正 ものづくり補助金 省力化(オーダーメイド)枠とは」をご覧ください。
ものづくり補助金の要件等は、公募回ごとに変更されることがあります。申請にあたっては、必ず「ものづくり補助金総合サイト」で最新の公募要領等を確認してください。
「製品・サービス高付加価値化枠」について
「製品・サービス高付加価値化枠」は、革新的な製品・サービス開発の取組を支援するものです。革新的な製品・サービス開発とは、顧客に新たな価値を提供することを目的に、自社の技術力等を活かして、既存製品・サービスの品質や機能性を高める試作・改良や、市場にこれまでになかった新たな製品・サービスを生み出すことをいいます。
単に設備・システム導入にとどまり製品・サービスの開発を伴わないものや、同業種の中小企業(地域性の高いものについては同一地域における同業他社)で、すでに相当程度普及している製品・サービスの開発は支援対象になりません。
製品・サービス高付加価値化枠には、「通常類型」と「成長分野進出類型(DX・GX)」の二つがあります。
このうち、「成長分野進出類型(DX・GX)」は、通常類型よりも補助上限額や補助率が引き上げられています。
●「補助上限額」は最大2,500万円
「製品・サービス高付加価値化枠」では、補助上限額が従業員数別に最大2,500万円に設定されています。
通常類型 | 成長分野進出類型(DX・GX) | ||||
---|---|---|---|---|---|
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 | 従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 100万円~750万円 (850万円) |
1/2 ※小規模・ 再生事業者2/3 ※新型コロナ加速化特例2/3 |
5人以下 | 100万円~1,000万円 (1,100万円) |
2/3 |
6~20人 | 100万円~1,000万円 (1,250万円) |
6~20人 | 100万円~1,500万円 (1,750万円) |
||
21人以上 | 100万円~1,250万円 (2,250万円) |
21人以上 | 100万円~2,500万円 (3,500万円) |
||
※補助上限額の( )の金額に関しては、大幅賃上げの特例に取り組む場合 |
通常類型 | ||
---|---|---|
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 100万円~750万円 (850万円) |
1/2 ※小規模・ 再生事業者2/3 ※新型コロナ加速化特例2/3 |
6~20人 | 100万円~1,000万円 (1,100万円) |
|
21人以上 | 100万円~1,250万円 (2,250万円) |
|
成長分野進出類型(DX・GX) | ||
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
5人以下 | 100万円~1,000万円 (1,100万円) |
2/3 |
6~20人 | 100万円~1,500万円 (1,750万円) |
|
21人以上 | 100万円~2,500万円 (3,500万円) |
|
※補助上限額の( )の金額に関しては、大幅賃上げの特例に取り組む場合 |
● 売上高全体に占める新製品・サービスの売上高10%以上などの追加要件あり
「製品・サービス高付加価値化枠」への申請にあたっては、以下の追加要件を満たす事業計画(3~5年)であることが必要です。
<「通常類型」と「成長分野進出類型」のいずれにも共通する要件>
- ①3~5年の事業計画期間内に、新製品・サービスの売上高の合計額が、企業全体の売上高の10%以上となる事業計画を策定すること
- ②本事業に係る資金について金融機関(ファンド等を含む。)からの調達を予定している場合は、金融機関による事業計画の確認を受け、金融機関による確認書を提出すること
<「成長分野進出類型(DX・GX)」のみの要件>
- ③DX:DXに資する革新的な製品・サービスの開発であること
GX:グリーン成長戦略「実行計画」14分野に掲げられた課題の解決に資する革新的な製品・サービスの開発であること
追加要件の詳細については、公募要領で確認してください。
●新型コロナ回復加速化特例の要件を満たす場合に補助率を2/3に引き上げ
また、「通常類型」において、業況が厳しいなかで賃上げに取り組む中小企業には、補助率を通常の1/2から2/3まで引き上げる特例が設けられています。
<「新型コロナ回復加速化特例」の要件>
- (1)常時使用する従業員がいること
- (2)2022年10月から2023年8月までの間で、3か月以上地域別最低賃金+50円以内で雇用している従業員が全従業員数の10%以上いること
- (3)補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での給与支給総額が1.5%以上増加目標を達成していること
- (4)補助事業を完了した事業年度の翌年度の3月末時点において、その時点での事業場内最低賃金が地域別最低賃金+50円以上の水準を達成していること
「グローバル枠」について
グローバル枠は、海外事業を実施する事業を対象として国内の生産性を高める取組に必要な設備・システム投資等を支援します。ここでいう海外事業とは、①海外への直接投資に関する事業、②海外市場開拓(輸出)に関する事業、③インバウンド対応に関する事業、④海外企業との共同で行う事業の4つの取り組みをいいます。
グローバル枠は、海外への新商品・サービスの開発及び改良、ブランディングや、新規販路開拓等の取組みを支援するものです。申請にあたっては、事業計画書において、事前にマーケティング調査を実施し、その結果に基づく開発及び改良、ブランディング等を行うことが必要となります。補助上限額や補助率に関しては、以下の通りです。
グローバル枠のうち、海外市場開拓(輸出)に関する事業については、海外旅費、通訳・翻訳費、広告宣伝・販売促進費も対象経費に含まれます。
従業員数 | 補助上限額 | 補助率 |
---|---|---|
従業員規模に 関わらず一律 | 3,000万円(3,100万円~4000万円) ※補助上限額の( )の金額に関しては、大幅賃上げの特例に取り組む場合 |
1/2 ※小規模事業者2/3 |
●大幅な賃上げに係る上乗せ支援を引き続き措置
ものづくり補助金では、「大幅な賃上げ」により補助上限額が上乗せされます。要件は以下の通りです。
- ①給与支給総額を基本要件の年平均成長率1.5%以上増加に加え、更に年平均成長率4.5%以上(合計で年平均成長率6%以上)増加させること
- ②事業場内最低賃金を毎年、地域別最低賃金+50円以上の水準とすることを満たし、さらに事業場内最低賃金を毎年、+50円以上増額させること
「製品・サービス高付加価値化枠」「グローバル枠」では、大幅な賃上げに係る上乗せ額の上限が1,000万円となります。
大幅な賃上げの追加要件については、未達の場合は上乗せした補助金額を返還していただくことになりますが、「従業員のモチベーション向上のために、大幅な賃上げに挑戦しよう」と考えている事業者におかれては、ぜひ上乗せ支援をご利用ください。
従業員数 | 上乗せ補助額 | 補助率 |
---|---|---|
5人以下 | 各申請枠・類型の上限から最大100万円 | 各申請枠の補助率とする |
6~20人 | 各申請枠・類型の上限から最大250万円 | |
21人以上 | 各申請枠・類型の上限から最大1,000万円 |
2024年2月29日
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